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作品名:「SagaU 神氣学園閑居傳」 作者:ジン 竜珠

第32回 参之傳 友、来たる・玖
「天宮くん天宮くん、あのキャラのぬいぐるみもいいと思わない?」
 と、戸賀中が俺のTシャツの袖を引っ張る。そしてそのまま、俺の腕を抱き込んだ。……すっごいんですけど、腕に当たる感触が。
「あれあれ、あのキャラクター!」
 と戸賀中が、筐体の中のぬいぐるみを指差す。確か、ナントカってアニメのキャラで、モチーフは狼だったと思う。アニメを観たことないから、わかんねえけど。
 ちなみに観たことないのに知ってるのは、今そのアニメのゲーム化の話が進んでいて、そのゲームを姉貴が務める会社で作ることになっているからだ。正確には姉貴たちは下請けらしいが「突貫になりそうで、多分、納品には間に合わないわ」とかボヤキながら、そのアニメのフィギュアだのぬいぐるみだのをいじり回していた。その中にあったのと、よく似ている。
 戸賀中が笑顔で俺を見上げた。
「ね、かわいいと思わない?」
「……よし、ちょっと待っててくれ」
 可能な限り(いいか、「可能な限り」だぞ!)、戸賀中の胸の谷間は視界に入れないようにして俺は戸賀中に答える。
 戸賀中には離れてもらい、俺はぬいぐるみを四方から観察する。さっきのアメショーよりもちょっと難しい位置にある。いろいろシミュレートした結果、おそらく八回以上は必要だという結論になった。
 ……なるほどな。
 俺は戸賀中の意図するところを推理した。なので、ちょっと裏技を使うことに。
「……よっと、……ほっ、と」
 なんていいながら俺は、ぬいぐるみを取った。七回で。
「すっごーい、天宮くん、あんな難しそうだったのに!」
 やたら感動してる戸賀中を見て、珠璃が俺にささやいた。
「なるほどねえ。それが竜輝の『やさしさ』か。でも、彼女は『そういう風』には、とらないと思うよ」
 そして俺を見て、意味ありげな笑みを浮かべる。
「そんなもんかな?」
 首を傾げる俺に「それもまた、キミのいいところなんだけどね」と、珠璃は笑顔で言う。
 俺が使った裏技とは、鎮魂。この鎮魂はただ魂を鎮めるだけじゃない。物の重さをある程度制御できるのだ。念力のようなものだと思ってもらってもいい。
 この鎮魂を使い、対象物周辺のぬいぐるみの重量を軽くし、取りやすくする。もちろん対象物であるぬいぐるみも軽くしておく。こうすれば、アームの力が弱くて途中で落下、なんて事態を防げるのだ。そうやって、取り出すまでの操作を七回に抑えたのだ。
 多分、戸賀中はわざと取りにくい物を指定し、俺がそれに何度もチャレンジすることで、珠璃に対してある種の「優越感」を得ようと思ったんだろう。そう推理したから、俺は珠璃と同じ操作七回に抑え、どちらに対しても同じぐらいの労力を使ったように見せたのだが。
 珠璃によると、どうやら、別の解釈も成り立つみたいだ。


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