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作品名:「SagaU 神氣学園閑居傳」 作者:ジン 竜珠

第25回 参之傳 友、来たる・弐
「優硫、今ので何組目だっけ?」
「……言ってくれるな、友よ……」
 優硫は思いきり肩を落としている。そりゃそうだろう、声をかける女性からことごとくNGを喰らっているのだから。
 夕刻、すっかりしょげかえっている優硫と別れて俺は帰路についた。
 実は、優硫がナンパを失敗しまくったのには訳がある。ずばり、俺が一緒にいたからだ。
 おおよその見当はつくと思うが、天宮流宗家の息子たる俺には、結婚の自由はおろか、恋愛の自由さえない。いわく「霊的に劣等な人物と深く『情』を交わすべからず」なのだそうだ。封建的かつ独善的なること極まりないが、古くから霊的血統を護っている旧家にはよくあることだ。
 つまり、俺には「女性と深い仲になれない」呪術がかけてあるのだ。それは時には女友達すらできないこともあるほどで、小学校の一時期、俺の周囲には野郎ばっかりということもあった。
 要するに、その呪術の余波で優硫のナンパ、失敗しまくりだったわけだ。
 すまねえな、優硫。
 俺は心の中で詫びながら、市電に乗り込んだ。

 バスに乗り換え数分、家の近くの停留所に降り立った瞬間。
「……天宮くん?」
 不意に呼びかけられ、俺はそちらを見た。バスの乗車口に足をかけた一人の女の子。
「……えっと、戸賀中(とがなか)さん……?」
「うんうん」
 と、女の子はバスのステップから降りる。そして運転手さんに「乗りませーん」と言うと、俺の方に小走りでやって来た。
「どうしたの、こんなところで!?」
 思わず、そんなことを言ってしまうくらい、正直、驚いた。彼女の名前は、戸賀中 千草(とがなか ちぐさ)、俺がここに転校してくる前に通ってた学校のクラスメートだ。
「夏休みだからさ、追っかけて来ちゃった」
 と、戸賀中は笑顔を浮かべる。
「いや、来ちゃった、って……」
 マジで驚きだ。一体、何をしに来たというのか?
「天宮くんの家って、この辺だったよね。でも、団地とか住宅地とかいっぱいで、よくわからなくて」
「ああ、俺の家は、もっと上の方、ていうか、てっぺん。……何しに来たんだ、お前?」
「だから、言ったじゃん、追いかけてきたって」
 そう言った戸賀中の頬が紅く見えたのは、多分傾いた陽射しのせいではないだろう。
 俺は、応える言葉を失っていた。


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