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作品名:「SagaU 神氣学園閑居傳」 作者:ジン 竜珠

第22回 弐之傳 遠い夏の日、悔恨は消えず・肆
「な、何言ってんだ、亜久谷……?」
 声が震えるのを抑えられない。
「お前だって、好きなんだろ、先生のこと?」
 応えることができない。
「幸い、お前は先生に可愛がられているからな、お前が『話したい悩みがある』とかなんとか言えば、先生だって来るさ」
 写真を持つ手が震えるのがわかる。
「お、お前、自分がなにを言っているのか、わかって……!」
「わかってるぜ。でもな、先生は結構面倒見のいい性格だ。最後にゃ笑って許してくれるさ」
 そんなバカな話はない。あるわけがない。
「今度の土曜日、午後三時半、学校の体育倉庫で待ってるぜ。どうせチキンのお前じゃ電話はできねえだろうから、俺がしとく」
 そう言って、零司の肩をぽんぽんと叩くと、純弥は去って行った。
 後に残された零司は、空虚な思いで写真を見ているしかできなかった。

 そして土曜日。まさかと思って零司は咲菜の家に電話をしてみた。
「なんで、なんで誰も出ないんだ?」
 何度もコールするが、誰も出ないのだ。
「まさか……!」
 嫌な予感が脳裏をよぎる。
 受話器を置いて、零司は家を飛び出した。

 学校に着くと裏門そばの、遅刻者専用道と化している金網の穴から中へ入る。そして体育倉庫へと向かった。
「よう、遅かったじゃないか」
 倉庫前で純弥がニヤニヤしていた。
「もう俺はすませちまったぜ」
 言いながら、左手の親指を立てて倉庫の中を指し示す。恐る恐る中を見た瞬間、零司は息を呑んだ。
 薄暗い中に白い背中と乱れた髪が見えたのだ。
「やっぱ、咲菜先生は最高だぜ。いろいろ教えてくれてよ。最後には俺にしがみついて……」
 純弥が言い終わる前に、零司の頭の中が真っ白にスパークした。それとは対照的にどす黒いモノが腹の底から立ち上り、右腕に流れる。
 おぼろげに、何かの咒を唱えながら、純弥に拳を放ったのは覚えている。
 しかし覚えているのはそこまで。
 ふと我に返った時、零司が見たのは、仰向けに倒れ顔がパンパンに腫れ上がり、血反吐を吐きながらピクピクと痙攣している純弥の姿だった。
「あ、亜久谷……?」
 声をかけるが、反応はない。その時、ふと、倉庫の中が見えた。白い背中と見えたのは丸めたマット、乱れた髪だと思ったものはモップだった。
 全身の血の気が引くような眩暈感に襲われ、零司はその場にへたりこんだ。


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