最初に向かったのは、宝條四丁目にある喫茶店「カレイドスコープ」だ。学園から歩いて二十分ぐらいのところだが、近くに遊べるスポットが多いため、放課後にウチの学生も、よくたむろしてる。 「で、何なんだ、その『第一学期末・スイーツキング決定会議』って?」 歩く道すがら、俺はそもそもの始まりとも言えるキーワードについて、美悠那に尋ねた。ちなみに、全員、制服姿だ。なんか、今日行く予定の「エテールノ・ジョイア」のパティシエが「制服好き(正確には「制服着た女子高生」が好き)」だそうで。……そういやあ、前聞いたことあるな。ホントに大丈夫か、あの店? 地元警察の防犯係とかが内偵進めてたりしねえよな? 「えーとね、一学期でいろいろ紹介したスイーツの中で、ナンバーワンを決めようって。一応、スイーツ研であたしが提案したんだけど……」 と、美悠那は目を伏せる。何があったんだろう? しんみりした調子で、美悠那が言った。 「みんな、こだわりがあって、意見が割れちゃって。で、もう一度食べ比べようってことになって、でも、活動費には限界があってね……」 ……思わずこっちもしんみりなっちまったが、そういう次元の話じゃないよな、これ? 「それで、みゅうちゃん先輩と私が、ジャンケンで勝ったです!」 ありすが無駄としか思えない元気っぷりで答える。 「そうか、そいつぁ、らっきーだ!」 俺も、こう言うしかないだろう。 「ん? ちょっと待てよ、美悠那とありすは活動費を使うとして、俺たちは?」 俺の言葉に、零司さんと鷹尋が顔を見合わせる。そうだ、根本的なところを忘れてた。 「心配いりまへんえ」 と、杏さんが笑顔になる。……なんだろう、この人の笑顔ほど不安なモノはないと思えてならない、この空気は? 「今日行く先で、スイーツ勝負をしてもらって、負けたお人がウチら六人分のお代を支払う、いうのんは、どうですか?」 うわ。なんだ、その高校生の域を超えたレートは!? ていうか、何、「スイーツ勝負」って? 「……といっても、急なお話で、持ち合わせがないと思いますさかい、ウチが立て替えておきますけど」 「ああ、俺、なんとかなるから!」 「ぼ、僕も!」 咄嗟に零司さんと鷹尋が言った。 「……あ、すまん、竜輝、多分、俺、自分のだけで手一杯」 「僕も……」 なんだか、ものすごく申し訳なさそうに零司さんと鷹尋がこっちを見た。 「あ、いや、別に二人にたかろうって思ってねえから」 「ゴメン、ボクも自分のなら何とかなるけど」 「……あたしも」 珠璃が申し訳なさそうに、麻雅祢は例によって無表情に言った。そりゃあ、お前らはそうだろうよ……とは思ったが、まあ、いいか。 「気にするな」 とだけ、二人には返した。……とはいえ、持ち合わせがないんだよなあ。珠璃から電話がかかってきた時、てっきり生徒会の用務だ、ぐらいにしか思ってなかったし(実際、珠璃もそんなニュアンスで話進めてたし)、そんなわけだからそんなに持ち合わせがある訳じゃない。俺にも珠璃の百分の一でもいいから、勘の鋭さがあればなあ。 「ということは、スイーツ勝負は竜輝はんだけですなあ」 なんだか、残念そうに杏さんが呟いた 「? あ、そうなるんスか? じゃあ、勝負は無効……」 「よぉっし、乗ったあ! ……みゅうちゃん先輩が」 ……。 「ええええええええええええええッッッッ!?!?」 ありすの言葉の後、一拍おいて、俺と美悠那の絶叫がハモった。
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