小説&まんが投稿
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:「SagaU 神氣学園閑居傳」 作者:ジン 竜珠

第17回 完全なる番外之傳 もう一つの「物語」〜唱う白骨標本〜・伍
『そう、ここの生徒さんなんだ。どのくらい経ってるかわからないから、はっきりとは言えないけど、私はね、多分あなたたちの先輩ね。あ、でも敬語とかは気にしないで』
 リクエストに応え、吊り下げている留め具から外すと、標本は自分で歩いて椅子に座った。あたしたちも隣の理科室から椅子を持ってきて座る。
「じゃあ単刀直入に聞くけど、ここで何しているの?」
 あたしの問いに少し首を傾げてから標本は答える。
『私さあ、ミュージカル女優になるのが、夢だったの。「タイガー・クイーン」っていうミュージカル見て、バッチリ「入って」きちゃってね。で、毎日歌の練習をして。そしたらある日、あるミュージカルの劇団でオーディションがあってね、それに出ようと思って出かけて……。そこから記憶が無いのよね』
 多分、オーディションに向かう途中で事故にでもあったのだろう。突然、死んだ時、自己の死を認識できないことがあるというのは、古来から言われていることだ。
『そんでね、気がついたら家の中にいて。みんな話しかけても無視するし。で、そのうち、ああ、私って死んだんだなあ、ってわかったんだけど。でも、どうすれば成仏したり「アッチ」に行けるのかなあとか、わかんないし』
 普通の霊界探訪記なんかを読むと、親族だの天使だのが導きに来るとかいうけど、彼女の場合、そうではなかったらしい。
『それで、フラフラしてたら、学校に来てて。そしたら歌いたくなっちゃってね。歌いたいなあって思ってたら、この標本に取り憑いてたの』
 横で、紗亜羅が小声で聞いてきた。
「あるのか、そんなこと?」
 あたしは首を傾げる。
「うーん、わからないなあ。霊が人間に取り憑くメカニズム自体、わからないことだらけだし。強いて言うなら、この標本と生前の骨格が似てたから、とか?」
「でもこれ、どう見ても背の高い、野郎の骨格だぜ?」
『ねえ、聞いてる?』
「あ、はいはい、聞いてます聞いてます」
 慌てて答えると、標本は溜息をつき、組んだ膝の上に頬杖をついて言った。
『私もさあ、そろそろしたいのよ、成仏ってヤツ? でもどうしたらいいかわかんないし。どうしたらいいと思う?』
 正式に祭壇を組んで儀式を行えば、あたしでもできるかも知れないが……。なんてことを思っていると、紗亜羅が言った。
「お葬式をちゃんとやってるんだよね。それでもダメって事は、なんか未練が有るんじゃねえの? その未練を断ち切るか解消してやればいいんじゃねえか?」
『そう! それよ! それなのよ!』
 と、標本が手を打つ。
「オーディションに向かう途中で事故死したんだとしたら、ちゃんとオーディション受ければ成仏できるんじゃないかな」
『でも今さらオーディションやってないし』
「それじゃあ、ここで簡単なオーディションの真似事をやってみたら?」
『……そうね。それがいいかも! あなた、冴えてるわね』
 そして紗亜羅と標本があたしを見る。
 いや、二人で勝手に話進められてもな。でも、なんか、二人とも乗り気だし。
 というわけで、即席だがオーディションをやることになった。


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 小説&まんが投稿屋 トップページ
アクセス: 261