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作品名:「SagaU 神氣学園閑居傳」 作者:ジン 竜珠

第16回 完全なる番外之傳 もう一つの「物語」〜唱う白骨標本〜・肆
「確かに聞こえるな」
 一階廊下にいるのだが、確かに聞こえる。紗亜羅にも聞こえるようだから、物理的現象だろう。あたしたちは唄声のする方へ向かった。

 どうやら理科準備室らしかった。
「鍵、かかってるぜ」
 ドアの南京錠をガチャガチャ鳴らしながら紗亜羅が呟く。
「ま、当たり前だけどね。ちょっと待ってて」
 あたしは南京錠を触りながら小さく呪文を唱える。すると、カチャリと小さく音を立てて錠前が開いた。
「スゲエ。何やったの、今?」
 感心する紗亜羅にあたしは答えた。
「『鍵がかかっている』っていう状態から、『鍵がかかってない』っていう状態にシフトさせたの。『時間』っていうのは、霊界においては『状態の変化』を意味することだから、霊界レベルで『状態の変化』に相応する因子を動かして、まず霊界レベルで解錠して、それから……」
「あー、ごめん、もういいや」
 右手をヒラヒラさせ、苦笑いで紗亜羅は言った。うん、難しいからね、この辺の話は。
「そだね。鍵を開ける魔法、みたいに思ってて」
 そう言ってあたしは南京錠をはずし、ドアをそっと開けた。すると。
 吊された人体の白骨標本が口を開け、唱っていた。……不気味な音程で。
「で、どうするよ?」
 美悠ちゃんたちと行動をともにしていただけのことはある、この異常事態にも紗亜羅は、たじろいでいない。
「とりあえず、取り憑いているモノと話をしてみましょ」
「話ですんだらいいけどな」
 そしてあたしたちは部屋の中に入った。その物音で、標本が気づいたのだろう、唄をやめ、何事か言った。
『カタカタカタカタ』
 だが、残念なことに舌も唇も声帯もないから、ちゃんとした言葉にならない。だったら、なんで唄声が出せるのか、ってのが気になるが、そこはそれ、そういうところこそ怪奇現象の怪奇現象たる所以だろう。
「まずは、仮の『口』を与えるのが先ね」
 あたしは持参した短冊に、同じく持参したペンで呪符を描く。
「いつも持ち歩いてるわけ?」
「まあね。どういう状況になるかわからないし」
「……ていうことは、御札なんか、全部覚えてるって事?」
「うーん、三百種類ぐらいは覚えてるかな」
 紗亜羅が絶句しているが、気にせずあたしは即席で描いた符を標本の額に貼り付ける。
『あなたたち、誰?』
 標本が喋り始めた。どうやら話すだけで解決できそうな雰囲気だ。


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