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作品名:「Saga T 神氣學園封神傳」 作者:ジン 竜珠

第99回 第壱部終幕之傳 封神・陸
 東の空が少しずつ明るくなっていく。
 旧名仁学園北校舎は、もはや原形を留めていない。
 イザナミだった砂堂麗亜は、一応、無傷だ。さすがに圧殺するわけにはいかないから、ヤツがぶつかる部分だけは、あくまで「物質的に」だが、もろくしておいた。そして、今、ヤツは惚けている。とりあえず意識はあるが、知能活動がまったくない状態というか、自我が崩壊しているというか。これが、冨賀森さんたちのように服用したモノの副作用なのか、イザナミとと称する存在が憑依していた後遺症なのか、現時点ではわからない。
 麻雅祢は、千引の石(ちびきのいわ)生成の咒の準備、及びその起爆剤となる「オホカムツミ」の合成で気力を使い果たしたのか、すやすやと寝息を立てている。蛍矢さん、鷹尋、零司さんは意識を取り戻していた。杏さんも、黒い塊から抜け出していた。
「なあ竜輝、ヤツが『ツチの御魂(みたま)』とか言ってたが、なんなんだ?」
 零司さんが、そんなことを言った。ええと。うまく説明できるかどうか、なんて思っていると、杏さんが先に言った。
「『竜の御魂』のことです。野槌(のづち)とか水霊(みづち)とか、いてますやろ? あれ、『野の霊』やら『水の霊』やらいう意味で言われてますなあ。『の』は、昔は津々浦々の『津』いう字が当てられてましたさかい。けれど、本来、『つち』いうのんは、巳(み)ぃさんのことですえ。せやから野槌は蛇体、水霊は竜体ですやろ? ついでにいうと、厳津霊(=雷、いかづち)は、天から竜が降(くだ)ってくるように見えますしなあ」
「ああ、なるほどなあ」
 と、蛍矢さんが頷く。
「竜の御魂を受け継ぐ者、それ故、宗家の最終兵器っつーわけか」
 それはどうだろ? 確かに「竜魂拝受(りゅうこんはいじゅ)」っていう秘儀は受けたけど、それを言ったら、親父も爺さんもそうだったわけだしな。
「えっと、それじゃあさ、土雷(つちいかずち)って、二重の意味があるわけ?」
 鷹尋が首を傾げる。
「強調じゃないかって、俺は思った。人の体にも竜は宿る。多くの人が右利きだから、様々に事を為す右手に特に竜の中の竜が宿る、って考えた、とか? まあ、思いつきだし、こじつけだから、本気にするな」
 と、俺は苦笑する。
「そうか。すると」
 零司さんが何かに気づいたように言った。
「出雲の国のアシナヅチ・テナヅチも、竜神だった可能性があるな。八岐大蛇の一件も竜神同士、あるいはともに竜神を祀る部族間の内紛だった可能性がある」
「さすがは、零司はん。こういう話になると食いつきがよろしゅおすなあ」
 と、杏さんが微笑みながら言う。
「ところで」
 と、鷹尋がふと、ある方を見た。
「起きないね、珠璃ちゃん」
 俺たちもそちらを見る。珠璃はまだ意識を取り戻していない。とりあえず、体や顔、口元の出血や吐血の跡は杏さんが拭いてくれたんだが、未だ、目を覚まさない。俺は珠璃に近づいた。生気は失われていないから、死んではいないが、心配だ。
 俺はゆっくりと珠璃を抱え上げる。その瞬間、珠璃の口が動いたように見えた。
「……?」
 何かと思っていると、珠璃が言った。
「何やってるんだよ、待ってるのに。昔から決まってるだろ、眠り姫を起こす方法は」
 そう言って目を開け、俺を、「ぼんやり」って感じで見る。メガネがないから焦点が合わないか、と思ったが、そういえばこいつはそんなに視力が悪いわけでもなかったな、ってのを思い出した。……って、この場合、どうでもいいな、そんなこと。
「……起きてるんなら、とっとと起きろやゴルァ」
「ロマンてものがないなあ、竜輝は」
「ロマンって。お前なあ、俺がどんなに心配したか……」
 全部言い終わる前に、杏さんが割り込んできた。
「竜輝はんには、もう少しいろいろと教え込んだ方が、よろしいのと違いますか?」
「そうですね」
 と、珠璃も溜息混じりに応える。
 何話してるんだ、この人たちは?
「まあ、今日のところは、お姫様抱っこで勘弁してあげるよ。ボク、ちょっと歩けそうにないから」
 ……。
 まあ、いいか、それぐらい。
 俺は珠璃をお姫様抱っこして立ち上がった。


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