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作品名:「Saga T 神氣學園封神傳」 作者:ジン 竜珠

第98回 第壱部終幕之傳 封神・伍
『……そういえば、あと一人、いたな』
 イザナミの表情が険を帯びる。
 ゆっくりと天井を仰ぐ。まだ少し身体に無理があったが、俺は跳ね起き、転がってきた桃の実を拾った。
 それに気づいたイザナミがニタリと嗤う。
『フン。オホカムツミにて我を封ずるか。だが、確かに我は言ったぞ? 今宵こそは敗けはせぬ、と』
 だが、俺は構わず、桃の実を前に差し出し、咒を放つ。
「汝(なれ)、吾(あ)を助けし如く、葦原中国(あしわらのなかつくに)にあらゆるうつしき青人草(あをひとくさ)の、苦しき瀬に落ちて患え悩む時に助くべし!」
 俺の咒に反応して、桃の実が弾け、甘い香りが瞬く間に周囲に充満する。それはまさに香りの奔流だった。一時はそれに呑み込まれたイザナミだったが。
『なめるでないわぁ!』
 全身に雷をまとわりつかせ、イザナミが吠える。瞬間、イザナミの周囲だけ香りが消え去る。そこに立つイザナミは、頭から角を生やし、もはや人の姿をしていなかった。
『フ、フフ、フフフアハハハハハ!!』
 やや調子の外れた感じの笑い声を立てると、イザナミは勝ち誇ったように言った。
『勝った! 勝ったぞ! 我はオホカムツミに勝ったのじゃ! もはや我を妨げるものはない!!』
 ふと俺を見て言う、蔑むように。
『何を企んでおったのかは知らんが、残念であったなあ』
 それを聞いた俺は。
「く、くくく、あっははははははは!」
 いけね。こっちも調子っぱずれの笑いになっちまった。案の定、イザナミが怪訝そうな表情を浮かべている。俺は、さりげなく、オホカムツミからの咒力を充填しながら言ってやった。
「お前、勘違いしてるぜ、それも根本的な勘違いを」
『な……に?』
 自信たっぷりに言った俺の言葉に不安を覚えたのか、イザナミの表情が翳(かげ)る。
「確かに、お前の軍勢を直接祓ったのは、オオカムツミの咒だろうよ。だけどな、お前つまりイザナミ自身を封じたのは、コレだァァァァァ!!」
 俺は麻雅祢に指示を出してから、バトルとは別に充填しておいた咒力を一気に開封した。それと同時に咒(しゅ)を唱える。
「ここに千引(ちびき)の石(いわ)をその黄泉比良坂(よもつひらさか)に引き塞(さ)え給いき! 道反之大神(ちがえしのおおかみ)、護り給え幸わえ給え、滅ぼし給え!!」
 咒に応えるように、桃の香りが再び立ちこめ、校舎全体を震わせた。そして、天井が崩れる。だが、崩落とは違う。崩れながら別のものに組み替わっていくのだ。
 そう、この校舎が千引の石になっていくのだ。
『ば、ばかな、ばかな、バカな!』
 まさか「千引の石」なんてものを用意できるとは思っていなかったのか、それとも本当にイザナミを退けたのが桃の実だと思い込んでいたのか。天を仰ぐイザナミ、いや鬼女はまったく動けない。
「これで、最期だ、おとなしく黄泉之国に帰りやがれッ!」
 気合いとともに、俺は「咒力」を放った。校舎のほとんどを喰い潰す再構成が一気に加速し、瞬時に夜空をバックに巨大な円盤が現れる。それは白と黒の勾玉が互い違いに組み合わさった模様、いわゆる太極のマークに似ていた。
『阿あ嗚呼ア亜蛙ア亜あ亜アアああ吾ァああ!!』
 天を仰いだまま、身動き一つせずイザナミは絶叫する。
 そして円盤はそのまま、落下し、一瞬で鬼女と化したイザナミを圧し潰した。


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