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作品名:「Saga T 神氣學園封神傳」 作者:ジン 竜珠

第97回 第壱部終幕之傳 封神・肆
「有り得ねえ」
 思わず俺は呟いていた。今、零司さんがやったのは、相手の放った呪術を、力のベクトルを反転させて相手に打ち返す術だ。大雑把に解説すると、受けたエネルギーを相手の持つ反対の属性にして返す術で、普通なら、属性が逆であるがためにそのエネルギーを吸収できず、力が大きければ大きいほどダメージを受けるはずなのだ。
 もし吸収したり、無効化したり、なんてことをやったんだとしたら。本当にイザナミかどうかはともかく、かなり高位の修業者であることは間違いない。
『火雷!』
 イザナミの胸から再び、渦巻き状の雷が放たれ、零司さんを炎に包む。そして、
『黒雷(クロイカズチ)、呑め!』
 腹から、バスケットボールほどの黒い塊が顕れ、杏さんに命中する。直後、杏さんは巨大化した黒い塊に呑み込まれてしまった。
 なんてこった。零司さんは、とりあえず霊的炎から逃れたようだけど、大ダメージを受けているようだし、杏さんは黒い塊の中。鷹尋と蛍矢さんは倒れたきり、ぴくりとも動かない。二人から生気は消えていないから、命に別状ないようだが、戦える状態じゃない。とすると。
 俺は、あることに思い至り、鈍い痛みの残る身体にムチ打って、教室から飛び出し、イザナミに蹴りを放つ。しかしイザナミ自身の呪的障壁に阻まれ、ヒットしない。
 俺は間合いをとり、咒を唱えた。
「神火清明 神水清明 神風清明 祓え給え浄め給え」
 清冽な泉の如き、清らかな氣で、周囲が満たされていく。イザナミは鼻で嗤って間合いを詰めてきた。そして。
『鳴雷(ナルイカズチ)、響け!』
 と、雷をまとった左足で、俺を蹴り飛ばす。衝撃波が俺の周囲を震わせ、氣で作り上げた障壁を消滅させる。十七、八メートルは飛ばされただろうか。ヤツの咒の影響で、身体が動かせねえ。
 なんてヤツだ、穢れを宿した身体で、清浄結界に踏み込み、あまつさえ咒を放つとは。……しまった! 俺が飛び出して清浄結界を張ったのは、珠璃が咒を放つタイミングを確保するためだ。これじゃあタイミングが……。
 イザナミも気づいたらしい。ふと外を見る。
「遅い!!」
 叫ぶと同時に、光の弾丸と化した珠璃が飛び込み、イザナミに体当たりした。金色の光がスパークし、視界が光に覆われる。一瞬、勝利を確信したが、光が収まった時そこにあったのは、イザナミに右足で、腹を踏みつけにされた珠璃の姿だった。
「珠璃!」
 俺の叫びにも、珠璃は応えることができないほどダメージを受けている。
 イザナミがもう一度鼻で嗤う。
『伏雷(フスイカズチ)、潰せ!』
 イザナミの右足に雷が走り、悲鳴を上げて珠璃が動かなくなる。
 哄笑し、イザナミが俺の方へゆっくりと歩み寄る。だが、俺の方はといえば、まだ満足に動けない。回復にはもう少し時間が必要だ。
 倒れている俺を見下ろし、妙に艶っぽい笑みを浮かべてイザナミは言った。
『せっかくだからのう。析雷(サクイカズチ)で、極上の悦びを与えてから屠ってやろうか』
 そんなことを言うイザナミの股間で、雷がスパークしていた。
 ちょうどその時、どこからか、桃の実が転がってきた。


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