小説&まんが投稿
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:「Saga T 神氣學園封神傳」 作者:ジン 竜珠

第95回 第壱部終幕之傳 封神・弐
 俺たちの目の前に立つ女は、姿形こそ砂堂麗亜という一個人だが、「中身」は別の何かといってもよかった。
 少なくとも「生者」とは言い難いほどの邪気と穢れに満ちている。
 何やら意味不明のことをわめきながら、女が右手を差し出す。
「やべっ!」
 叫んで、俺は横跳びに跳ぶ。直後、俺がいたところを、見えざる弾丸が駆け抜けていった。
「気弾どころじゃないな」
 言いながら、零司さんがポケットから咒具を取り出す。零司さんは、何らかのアイテムを利用して咒力を発揮するのを得意としている。今、手にしているのは、翼を広げた鳥のような形をした、銀細工だ。ちょっと見るとペンダントヘッドのようで、実際そういった使い方もしているそうだ。
 咒具を目の前に掲げ、零司さんは咒(しゅ)を唱える。
「思えども 人の業(わざ)には 限りあり 力を添えよ 八百万神(やおよろずがみ)」
 その途端、零司さんの咒具がまばゆいほどの銀光を放つ。
 その横で杏さんも咒を唱えた。
「天清浄 地清浄 内外(ないげ)清浄 六根清浄と 祓い給え清め給え」
 杏さんの身体が、金色の光球に包まれる。
『ほう』
 と、女……いや、イザナミがニヤリとする。
『神の業(わざ)を体現しうる御魂が、ござったか。これは愉快愉快』
 本当におかしそうに、エビぞりになって哄笑すると、イザナミは酩酊したかのような幽玄境を見据えるような目つきになって言い放った。
『かつて、オホカムツミの咒によりて、我は敗れた。なれば、今宵こそは敗けはせぬ!』
 オオカムツミだぁ? 何言ってんだ、こいつ? ……って、……なるほど。
 ふと気づいた俺は、麻雅祢を呼び、小声で「あること」を指示した。
「できるか?」
 少しだけ首を傾げ、考える素振りを見せてから、麻雅祢は答えた。
「多分。でも時間と集中が必要」
「よし! それだけ聞けば十分だ!」
 俺は拳を構え、全身に咒力を巡らせる。俺が麻雅祢に指示している間、零司さんと杏さんが時間稼ぎをしてくれていたらしい。二人がかりでも苦戦しているみたいだ。
「おい、坊主、俺ゃ、何したらいい!?」
 イザナミの霊圧に吹き飛ばされたらしい蛍矢さんが、宙でトンボを切って体勢を立て直し、俺の前方二メートルのあたりに着地する。勢いを殺しきれず、着地した位置から二メートルぐらい滑って俺の隣に並ぶ。
「アイツを倒してください!」
 俺は蛍矢さんの要望通り、指示を出した。
「……ごもっともだな」
 苦笑すると、蛍矢さんはジャンプし、天井をぶち破った。
 俺は珠璃と鷹尋に目配せをする。それだけで、俺の考えが伝わったようだ。要するに。
「とにかく倒せ。倒せなきゃ、せめて麻雅祢の準備が完了するまで時間稼ぎしろ」だ。
 珠璃の瞳が燐光を放ち、髪が金色に輝き始める。鷹尋もその周囲で風が渦巻き始めた。
 そして俺の周囲を、雷光にも似た光が閃いていった。


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 小説&まんが投稿屋 トップページ
アクセス: 125