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作品名:「Saga T 神氣學園封神傳」 作者:ジン 竜珠

第94回 第壱部終幕之傳 封神・壱
 飛び込んだ先は、一階の廊下。そしてそこにいたのは、一組の男女。
「蛍矢さん!? それに、そっちの女は……?」
「砂堂麗亜はん、どすな?」
 俺がぶち破った窓から入ってきたんだろう、杏さんが俺の後ろに立って、女に話しかけた。
「一度、いや二度ほどやったかなあ、お会いしたんですけど、覚えてはるやろか?」
 杏さんが「砂堂麗亜」と呼んだ女が首を傾げる。
「せやなあ、覚えてへんのも無理ないわなあ。あの時は、新年会でゴタゴタしてましたうえ、チラと見ただけやさかい」
 砂堂麗亜の方は、杏さんのことを本当に思い出せないらしい。だが。
「お前、宗師のところの孫ね」
 俺を見て、女は口元を歪めて嗤った。
「そう。これぞ『天の配剤』というやつかしらね。いいえ、神が与え給うた千載一遇の好機というべきかしら。今まさに『神のカケラ』の素晴らしさを、見せてあげようとした時に、現れるなんてね」
 なに? 神のカケラ? 何言ってんだ、こいつ?
 ていうか、明らかに「人の目」をしていない。喩えるなら、魔に魅入られた者の目、妖魅に取り憑かれた者の目。
 不意に女の表情が凄惨な色を帯びた。そして宣言するように言った。
「見るがいい! この地に封じられし神の力を! 祝すがいい! この地に封じられし神の復権の時を!」
 直後、女は手にしていた琥珀色のモノを口に放り入れる。その時だった。
 地鳴りとも、呻きとも言えぬ「音」が空間全体に響いてきたのだ。
「いや、これは共鳴か?」
 俺が呟くと、同じく北校舎に入ってきた珠璃たちが頷く。
 蛍矢さんが、肩をすくめる。
「どうやらあの女の持ってる『金丹らしきもの』と、ここの土地の氣が、共鳴関係にあるらしいぜ」
「え? どういうことッスか、それ?」
「さあな。俺も聞きてえ」
 何が何だか、さっぱりわからねえ。蛍矢さんは多少、事情を知ってそうだけど、ゆっくり聞いてる暇は……なさそうだな。
 女が、ゆらりとこっちを見る。その表情は、一言では表せない。愉悦を宿しながら、それは果てしなく冥(くら)く、痛みを宿しながら、それが快楽となっているような。
『我が身は成り成りて成り足らざる処、一処あり』
 そう呟いてから、砂堂麗亜……いや、砂堂麗亜「だったもの」は言った。
『我が愛し兄神は、独り神に成りて数多の神をお産みになった。我、今こそオノコロ島に戻りて、古の約定を果たさん』
 ……何かと思えば。「天香香背男」に続いて今度は、この神か。でも……。
「竜輝、気がついてるか?」
 と、零司さんが俺に言った。
「ええ。こいつは、ただ単にあの女の妄想が暴走してるわけじゃない。少なくとも、自分のことを、本当にそうだと、思い込んでいる存在が関与してます。……自分のことを『イザナミ』だと思い込んでいる、何者かが……!」


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