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作品名:「Saga T 神氣學園封神傳」 作者:ジン 竜珠

第9回 壱之傳 白骨は美少女の夢を見る・陸
 なるほど、さすがは中城(なかしろ)だ。さりげなくこちらに非があるかのような論法で攻めてくる。だが、真吾も負けじと、冷笑混じりに言う。
「まだ、お伝えする段階ではありませんので文書化はしておりませんし、メモは一切取らず、また他言無用で願いたい。あの山林に広域圏をカバーする道路が通るという計画があります。それが実現すれば、あの土地及びその周辺地価が上昇するのは自明の理。さらに、そこに傘下のコンビニを配置すれば、かなりの収益が望めるものと思います」
「しかし、それは可能性の問題なのでしょう?」
 中城は変わらぬ表情で言う。だから、真吾はさりげなく、嘲笑の色を瞳に浮かべて言ってやった。
「それを実現するのが、『企業努力』というものでしょう? いくら綺麗事を並べようと、それなりの働きかけをすれば『動いてくれる』官僚の多いのが、この国の現状」
「そういうのは、いかがかと思いますが?」
 と、ショートカットの若い女性が口を挟んだ。年齢は確か真吾と同じぐらいか、少し下だったと思うが、その若さでこの席にいるということから、かなりの実力者であることがわかる。なかなかの美人だ。名前は如月 双葉(きさらぎ ふたば)。惜しむらくは次期社長を狙う派閥の中でもっとも貧弱な基盤の、会長ジュニア派に属していることだろう。しかし彼女自身が会長の姪ということならば、仕方ない。おそらく彼女も悔しい思いをしているのではないだろうか。
 そんな風に思いながら、真吾は双葉の発言を聞いた。
「今や、官僚と繋がりを持って事業を展開する時代ではありません。そのようなことをしていては、もし内部告発などされた時、マスコミの餌食となり、グループ全体のイメージダウンに繋がります。遠回りなようでも、清廉潔白に地道に事業を展開すべきではありませんか!?」
 理想論など、現実では何の役にも立たない。だが、それは彼女も理解しているだろう。要は真吾に対するアンチテーゼであり、少しでもこちら側にダメージを与えるのが目的なのだ。
「そのご意見は、それなりに尊重いたしますが、第一に我らは雇用者であり、被用者とその家族に対して、生活の保障をするという責任があります。勝つためならば、手を汚すことも厭(いと)わない、我々はそれだけの覚悟を持つべきではありませんか?」
「それは極論であり、論理のすり替えです!」
「言いたくはありませんが」
 と、真吾は幾分、険のある視線で双葉を見据える。一瞬、双葉が気後れして目を逸らしたように見えたのは、錯覚ではあるまい。
「あなたも程度の差こそあれ、似たようなことはなさってきたのではありませんか? 例えば、販売促進部時代に、規定額以上のマージンを支払ったりとか」
「身体検査」は、完璧に行っている。そういうのを、ここで、さりげなく見せるのだ。双葉はまだ何か言いたそうだったが、それきり黙ってしまった。

 理事会は一時間半ほどで終了した。一応は真吾の勝ちだったが、油断はできない。
「お疲れ様でした」
 別室に行くと、一人の女性が控えていた。緑色のスーツに同色のタイトスカートを穿き、栗色の長い髪をポニーテイルにした、どこか鋭い美しさを持った長身の美女。かけたメガネの奥の瞳には、知性の輝きがある。そのプロポーションは、現役のモデル並みだ。秘書の石動 紗弥(いするぎ さや)である。紗弥が深々と礼をした。
「いかがでしたか、理事会は?」
「『男は外に七人の敵がいる』とはいうけれど、七人どころじゃないかもね」
 苦笑いとともに言ってみる。
「あら。それはたいへんですわね」
 紗弥が、大袈裟に驚く。それを見て、真吾は苦笑いをはり付けたまま言った。
「おいおい、そのために君を雇ったんだけどな。給料分は働いてよ?」
「あれではまだ、不足ですか?」
 余裕の笑みで紗弥は答える。
「そうだな」と、真吾は言った。
「殲滅戦ていうのが、好きなんだ、僕って男は、ね」
 不敵な笑みを浮かべて。


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