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作品名:「Saga T 神氣學園封神傳」 作者:ジン 竜珠

第89回 陸之傳 冥陣(みょうじん)・拾弐
 火曜日。早朝、俺は学園に生徒として通っている天宮の関係者全員に、メールした。内容は「緊急で相談したいことがある」だ。
「俺や杏さんだけで、抱えるべき事じゃないな」
 杏さんの予知の件だ。てっきり球技大会の後だと思っていたから、余裕ぶっこいていたが、陸上競技会のことだとすれば、まさに今日のことかも知れないのだ。幸い、昨夜は何もなかったが、警戒する人数が多いに越したことはない。
 もちろん、冥神も動いているか警戒しているだろうが、彼らだけでは万全ではないと、いつか石動さんも言っていた。

 学園にはかなり早めに来た。みんなも早めに来てくれた。
「すまねえな、鷹尋。朝練、休ませちまって」
「ううん、いいよ。それより、何だい、緊急で相談したいって?」
 朝七時、俺たちは本校舎の屋上にいた。陸上部が朝練をしているのをチラと横目で見て、もう一度、鷹尋に詫びてから、俺は杏さんに言った。
「杏さん、これは俺の独断です。だから、杏さんには責任はないです。何かあったら俺が……」
「そこから先は、言わなくても、よろしおす。竜輝はんが決断せなんだら、ウチが決断してましたさかい」
 と、柔らかく微笑む。俺は杏さんに一礼してから、みんなに向いた。
「みんなに、聞いて欲しいことがあるんだ。今から話すことは、これまでトップシークレット扱いだったことだ。だけど、場合によってはたいへんな事態になるかも知れない。だから、みんなも頭に入れておいて欲しい」
 神妙な表情になったみんなに、俺は、五年前の経緯から話し始めた。

 さすがに初めて聞く話だったんだろう、鷹尋なんか、ちょっとショックを受けているみたいだ。零司さんは、何となく思い当たることがあるような表情だった。この人には、当時、ちょっとした相談とかしたからな。麻雅祢(まがね)は、よくわからない。まったく表情が動いてないから、感情が読めない。珠璃は、こいつは少し考える素振りを見せてから、頷いた。何か思い当たることがあるんだろうか。
「ちょっといいかい?」
 と、珠璃が俺に聞いてきた。
「まだ、話が断片しかないからわからないけど、砂堂の当主はどうしてそんなことをしたんだと思う?」
「さあな。俺が聞かされたのは、さっきも言ったが、謀反の画策、そして己の四魂をコピーして攻めてきたこと、ぐらいだな」
「そこだよ。それは本当に四魂のコピーだったのかな?」
 不意に、そんな謎かけをしてくる。
「ああ? どういう意味……、あ!」
 言いかけて、俺も気がついた。そう言えば、冨賀森さん、そして霧元さん、いずれも四魂のうち一つだけが突出して活動していた。
 俺の中で断片だったことが、一つに繋がっていく。
「例えば、の話として聞いて欲しい。砂堂の当主ほどになると、自身の四魂を制御することなど、たやすいことだろう。でも、もしそれを普通の人間にも可能とするようなアイテムがあったら? そしてあの時の一件にそのヒントとなるものがあったとしたら? 冨賀森さんたちは、その実験に利用されたとは考えられねえかな?」
 零司さんが唸る。
「五年前の時、砂堂の当主は自らの意志で四魂を制御したんじゃなく、何かのアイテムの力で、そういう状態になった。そして、それが、そもそもの始まりだったのかも知れない。……ていうことかな?」
 麻雅祢が、やっぱり無感情な声で言った。
「自身の魂の完全制御と完成、それは神仙界へのパスポート、羽化登仙の道標(みちしるべ)」
 そうだ。天宮流神仙道でも、修業で魂を養い、神仙界へと行って高位の神仙から教えを請い、人の身を脱して永遠不滅・変幻自在の神僊(しんせん)となることを目的としている。
 だが、修業で確実にそうなれるかっていうのは、仙縁だとか宿業だとかいろいろあって、確実なものではない。
 そんな不確定な修業をすっ飛ばして確実に仙人になる「金丹」なんてアイテムがある。
「もしかして、砂堂の当主は『金丹』かそれに近いものを、作ったか、手に入れるかしたんじゃないかな?」
 俺と同じ順序で思考していたらしい珠璃が、そんなことを言った。
「でも、あれだよね、金丹っていったら、現実には人間界には存在しないものだよね?」
 そう言って鷹尋が俺を見る。零司さんも頷きながら言った。
「道士たちの見果てぬ夢、それが金丹だ。本物があるとしたら、神仙界だろうし」
 杏さんが扇子で口元を隠し、言った。
「でも、それをなんらかの方法で手に入れた。それを服用したために、砂堂の当主は、あないなことになってしまった。もしそうやったら、金丹は修業を積んだ高位の道士でさえ狂わす、とんでもない劇薬どすなあ」
 ある程度、見えてきた。その時の金丹だかなんだかを、普通の人間にも使えるようなシロモノにするべく、冨賀森さんたちが実験台にされた。しかし、それは四魂のバランスを狂わせる、いわば毒薬だった。
 それじゃあ、そもそもの始まりともいえる金丹を、砂堂はどこで、どうやって手に入れたんだ?


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