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作品名:「Saga T 神氣學園封神傳」 作者:ジン 竜珠

第88回 陸之傳 冥陣(みょうじん)・拾壱
 穂津深たちを見送ると、蛍矢は、蓮奈がいた家へと引き返した。今はああいう状態で使用されているが、あの家はもともと冥神の拠点(ベース)の一つだ。ほかにもベースはあるわけだから、わざわざあの家を選ぶ必要はないが、蓮奈のことが心配でついあの家を使ってしまう。
 そして先刻、蓮奈は蛍矢にだけわかるように目配せをした。何か、蛍矢にだけ伝えたいことがあるのだろう。
 向かいながら蛍矢は思った。さっきは「軟禁」を否定したが、ああいう事情なら、あながち風説とも思えない。天宮の暗部を知ってしまった蓮奈を、何かと理由をつけてあの家に隔離しているのかも知れない。あるいは、そもそも蓮奈が霊獣に喰われた一件も、宗家の陰謀かも知れぬ。
「……まさか、な」
 陰謀観を頭から追い出すと、蛍矢は家の前に立つ。一階は消灯してあるが、二階はまだ煌々と灯りがついていた。

「やはり来たな」
 二階に上がると、蓮奈は布団の上にあぐらを掻いていた。そして。
「『咒』が発動してるンスか」
 部屋の中央に敷かれた布団の上にあぐらを掻く蓮奈に向けて、天井や壁から鎖やロープが伸び、蓮奈の拘束衣に着けられたベルトやフックに繋がっているのだ。その姿は手足の自由を奪われ、がんじがらめにされた咎人のようで、痛々しいことこの上ない。
「どうということはない、気にするな」
 蓮奈は弱々しいながらも、笑顔で答える。
「気にするなって言ったって」
「私のバイオレベルが下がると、自動的にこうなるんだ。ある意味、自動的に私を護ってくれる。有り難い限りさ」
 沈痛な思いが胸に起こるのを抑え、蛍矢は正面に向き合って座る。
「何か話があるんでしょ?」
「……蛍矢。お前には真実を話しておこう」
 神妙な表情で、蓮奈は言った。
「は? 何スか、それ?」
「さっきの話、私はすべてを話したわけではない」
「……ちょっと待ってくださいよ、どういうことですか?」
 急に頭から血が下がるような感覚が起きる。それほどまでに冷淡に言った蓮奈の表情は、蛍矢がよく知る蓮奈でも、冥神の元リーダーとも違う、別のものだった。
「もう一度、言っておこう。お前にだけは、真実を話しておく。さっきは話さなかった、真実を。……この意味がわかるな?」
 そして、艶っぽい笑みを浮かべる。どこかやつれたような空気をもった、それだけに蛍矢の胸に直接入り込んでくるような笑みだった。
「姐御……」
「私がお前の気持ちに気づいていないとでも思ったか? 私の方もいろいろと悩んだりもしたが、お前は頼りになるしな。こうなった今、私も頼る誰かの胸が欲しいんだ」
 その言葉に、蛍矢は己の想いを抑えきれなくなった。
「姐御!」
 思わず、蓮奈に抱きつく。
「すまんな、こういう状態でなければ、私もお前を抱き返すのだがな」
 蛍矢は一層の愛しさで蓮奈を抱きしめた。


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