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作品名:「Saga T 神氣學園封神傳」 作者:ジン 竜珠

第85回 陸之傳 冥陣(みょうじん)・捌
 自分もすべて知っているわけではない、という前置きをした上で、蓮奈は話し始めた。
「私はその日の早朝、新輝学園にいた。学園の『力場』が妙な乱れを示したからだ。不確定要素が多かったが、教師や生徒たちに悪影響が出る可能性が高かった。……実は、そのしばらく前から学園の『力場』がおかしなことになっているという報告を受けて、チェックしていたんだが、その日は、ついにその変調が他者に影響を及ぼすまでになったと、私は判断したんだ。そこで、すぐに宗家に連絡を入れた。ところが、それに対しての返答は『干渉するな』だった」
 具体的には、学園の監視を一時、放棄しろとの命令だった。また、すでに手は打ったということだった。
「あとで確認をとったことだが、数日前にすでに臨時休校の措置がとられていたそうだ。当時は本当に『力場』などの監視だけだったから、学園の内情まではわからなかった。……と、これは余談だったな」
 蓮奈は少しだけ口元に笑みを浮かべる。自嘲というには、あまりにも弱々しい。
「私は命に従い、その場を離れることにした。だが、その時、旧名仁学園のあたりから、おかしな『歪み』を感じたんだ。それを見過ごすことができなかった私は、旧名仁学園の校舎へ急行した……」

 使われなくなって久しい、ということだったが、やはり定期的に人の手が入っていると見えて、整っていた。さすがに塵一つないという状況ではなかったが、少し掃除をすれば次の日からでも授業ができる、そんな感じだったな。私が入ったのは北校舎だった。鍵はかかっていたが、一階倉庫の裏手にある窓が、簡単に外れるのを知っていたからな、そこから中に入った。一通り確認してから帰ろうと思った、その矢先だった。
「ヌ? なんだ、貴様は?」
 突然、そんな声が背後からかけられた。ハッとなって振り返ると、一階の倉庫へ向かう曲がり角に、一つの人影があったんだ。恥ずかしい話だが、まったくその気配が察知できなくてな。その影は、砂堂の当主だった。白練りの装束で、何かの儀式を行う直前のように緊張感がみなぎっていたな。五十代ということだが、立ち姿はもう少し若く見えた。だが、その険しい表情は年相応の威厳があった。
「ほう。お前は確か、宗師が子飼いにしている組織の一員だったな」
 そう言って明らかに揶揄するような笑いを浮かべると、砂堂は、こう言ったんだ。
「どうだ、その気があるなら、天宮の『罪』を見せてやる。ついてくるがいい」

 ここで、一呼吸置くと、蓮奈は蛍矢を見る。頭を掻きながら、蛍矢は聞いた。
「んで、姐御はついて行ったんですかい、そいつに?」
 まるで「ついて行くわけがない」とでも言いたげだ。それを予想していたらしい蓮奈は笑みを浮かべ、答えた。
「ああ、ついて行った」
 一瞬、蛍矢の表情が凍ったように見えた。
「だが、見失った」
 そう答えて、蓮奈は愉快そうに言った。
「想像できるか? 一本道の校舎の廊下だ。にもかかわらず、ある教室に入った途端、ヤツの姿が消えたんだ。もちろん捜したさ。だが、気配も何も感じられない。床にも壁にも、どこか別の場所への隠し扉があつらえてあるわけでもない。狐につままれたよう、とは、あのことだな。隠形(おんぎょう)の咒を使った気配もなかったしな。まあ、私がそんな『力』を感じられなかっただけかも知れんが」
 その後、旧校舎の点検をしたが、さしたる異常もなく、蓮奈はその場を去ったという。
「そして、その日の昼前だ。私に命が下った。……砂堂を討て、と」
 蓮奈の言葉に、その場が凍り付いた。


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