小説&まんが投稿
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:「Saga T 神氣學園封神傳」 作者:ジン 竜珠

第84回 陸之傳 冥陣(みょうじん)・漆
 階段から下りてきたのは、長身の若い女。やや痩せている感はあるものの、プロポーションは、いい方だ。赤茶けた髪は背中の中程まで伸ばしているものの、よい艶に輝いているとはいえない。着ている服には、あちこちにベルトや金属製のフックが取り付けてあり、まるで拘束衣を思わせる。そしてその面差しは精悍といってもよいが、瞳の奥には精一杯の気力を振り絞っているかのような、余裕のなさが見え隠れしている。
「起こしてしまいましたか」
 蛍矢が、すまなそうに言うが、女はふと柔らかい笑みを浮かべて応えた。
「いや、今日は朝から調子が良かったからな。『入眠の呪』は使ってないんだ」
「そうですか」
 と、蛍矢は複雑な表情で頭を掻く。
「で、どっから、聞いてたんですか、姐御?」
 蛍矢から「姐御」と呼ばれた女は、階段に腰かける。
「お前らがここに来てからだ」
 その影で、穂津深が栂に小声で尋ねた。
「誰ですか、あの人?」
 振り返り、同じく小声で栂は答えた。
「真佐浦 蓮奈(まさうら れんな)。冥神の先代リーダーだ」
「え!? じゃあ、あの人が!?」
 思わず声が大きくなった穂津深はあわてて自分の口を手で抑える。栂は溜息をつくだけだ。とりあえず穂津深にかわって失礼を詫びようとしたが、穏やかな笑みで蓮奈は首を横に振った。
「かまわん。こんな事態になってしまったのは、私の修業不足が招いたこと、いわば自業自得だ。それに、噂もあながちデタラメではない」
 どこか、吹っ切れたような表情で蓮奈は答えた。
「噂っていうより、かなり誇張された誹謗に近いと思いますがねえ」
 やや、深刻な表情で蛍矢は言ったが、蓮奈は気にとめていないようだ。
「さて。さっきの話の続きだ。五年前の当時、私は冥神のリーダーとして修祓に加わった。だから、今の話よりは、ほんの少しだが、踏み込んだ事情を知っている」
そう言って一同を見渡す。皆の表情から、続きを促すものを感じ取ったのか、蓮奈が頷いて話し始めた。
「まず断っておく。私もすべてを知っているわけではない。ただ、今、冥神のメンバーが知らされていることよりは、少しは事情を知っているに過ぎない。そして本来なら、これは私が墓場まで持って行くべき事だ。だが、今回は事情が事情だからな。実働のお前たちには知らせておかねばならないと思う。だから、今から私が話すことは、心して聞いてくれ。くれぐれも部外者には、口外せぬこと」
 蓮奈の決意が伝わり、蛍矢たちは神妙な面持ちで頷いた。
 それを確認し、蓮奈が話し始めた。
「大筋において、お前たちが知らされている話は正しいと思う。だが、細部がかなり異なる。まず第一に、妖魔どもは砂堂の当主が召喚したのではない。第二に砂堂の当主は『無理』が祟って落命したのではない。第三に、砂堂がやろうとしていたことが本当に謀反だったのか、疑わしい。……もっとも、第三は私がそう感じているだけだがな」


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 小説&まんが投稿屋 トップページ
アクセス: 257