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作品名:「Saga T 神氣學園封神傳」 作者:ジン 竜珠

第83回 陸之傳 冥陣(みょうじん)・陸
「読みが、見事に外れましたなあ」
 グラウンドを見ながら、俺と杏さんは互いに苦笑いを浮かべるしかなかった。
 しばらく前。杏さんはこんな予知をした。
「旧名仁学園跡、夜、争乱の芽。日時はわからず。ただし、球技大会よりあと、文月には入らず。蝶、舞う」
 これを砂堂麗亜が、復讐のために本格的に動き出す前兆ととらえ、その時期を球技大会の直後だと考えた。その根拠は「グラウンドに真新しいラインが引かれてあったこと」、それは「球技大会のために引かれたものではないか」ということ、そして「それが乱れていたようだったので、球技大会より後」だと判断したのだ。さらにいえば、「そのラインは大会が終わって三、四日もすれば、ほとんど消えてしまうらしい」ことから、七月より前のことだと推測したのだ。
 だが、六月十八日の月曜日、放課後に新しくラインが引かれていたのだ。ちょうど部活に向かう途中の鷹尋をつかまえて聞いてみた。
「近隣の市による陸上記録会が、今週末にあるんだよ。今年の会場はウチなんだ。いわゆる『持ち回り』っていうやつ? ちなみにウチの場合だと、インターハイの予選会の直前だから、実質的に強化対象選手の選抜会にもなってるんだって」
 それならそうと早く言ってくれればいいのに、とは言えねえよな。砂堂麗亜と五年前の一件は、この学園では俺と杏さんしか知らない。……いや、姉さんは知ってるから「冥神」繋がりで凉さんや石動さんも知ってる可能性があるが、まあ、あの人たちは天宮の特殊部隊みたいなものだからな。とりあえず、あの一件は、他の面々にはオフレコの内容だから、俺たちも鷹尋たちの助力を期待するわけには、いかねえ。
 部活に向かう鷹尋を見送り、俺は杏さんに小声で聞いた。
「もしかして、このラインっすか?」
「そうですやろなあ。普段、引かれてへんところにもラインがあったもんですさかい、てっきり、球技大会やと思うたのどすが」
 もしこのラインが杏さんの予知にあったものなら、このラインが引かれている間が問題の「日」ということになる。どうやら、この一週間、いろいろと警戒していた方がいいかも知れない。

 六月十八日、深夜。ここは、市内にある、とある一軒家。家自体はさほど大きくはない。おそらく建坪は五十平方メートルあるかないかだろう。二階建てだから、合わせて百平方メートルほどか。だが、その中は上がり框(かまち)はあるものの「玄関」というほどの造作(ぞうさく)はなく、仕切りのない洋間一間ゆえ、広く感じる。今、その一階部分に三人の男女が、床に直に座っていた。一人は二十代後半だろうか、クセ毛なのか髪はザンバラでどこかアウトローな印象を受ける。今は無精ヒゲを生やしていることもあって、ますます、そういう印象を深めていた。二人目は長身で鍛えられた体つきの男。髪は短め、実直そうな印象を受ける。三人目は若い女だ。やや小柄だが、均整のとれた体つきで、長い髪を、後ろでお団子にまとめている。顔つきはどちらかというと優しげな印象だが、瞳の奥に宿る光は日常世界では絶対見ることはない類(たぐい)のものだ。
 冥神のリーダー・五十村 蛍矢(いそむら けいや)、メンバーの栂 亨(つが とおる)、屋敷 穂津深(やしき ほづみ)だ。いずれも竜輝が関わった事件に関わっている。
「凉サンから連絡があった。この間っからの事件を裏から糸引いてるヤツのことがわかったそうだ」
 蛍矢の言葉に栂と穂津深がその表情を厳しくする。
「砂堂麗亜。五年前の亡霊だ」
「五年前?」
 蛍矢の言葉に、穂津深が首を傾げる。
「なんですか、『五年前の亡霊』って?」
 思わず、栂に尋ねる。栂も少しだけ首を傾げる。
「そうか、お前はまだ、冥神に入って三年だったな。その件については、実は俺も詳しくは知らん。五年ほど前、天宮流の中でも高い地位にいた砂堂家の当主が、謀反を画策し妖魔を召喚、高弟に招集がかけられ、妖魔を修祓(しゅばつ)したが、その時に砂堂の当主も召喚の『無理』が祟って、亡くなった。……このぐらいしか、聞かされていない」
 そのぐらいの説明でも十分だったのか、「なるほど」と穂津深は頷いていたが、栂はどこか納得がいっていないのだろう。蛍矢に視線を向ける。その目が語るのは、真実を求める声なき声。
 苦笑いを浮かべ、蛍矢は右手で無精ヒゲをさする。
「さて、と。まいったなあ。俺も詳しいことは知らねえんだよ。なんせ、トップシークレットらしくてなあ」
「ならば、私が教えてやろう」
 蛍矢のボヤキに応えるように、突然、二階から声が振ってきた。


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