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作品名:「Saga T 神氣學園封神傳」 作者:ジン 竜珠

第8回 壱之傳 白骨は美少女の夢を見る・伍
 宝條は千京(せんきょう)市の中心であり、商業区である。ここにミハシラ・コーポ傘下のホテルがある。「まほらま」という名前はそのままに、経営母体がミハシラに変わったホテルだ。その一室、十二階にある「紫の間」は、各種レセプションにも使用されるが、今は「私立新輝(しんき)学園臨時理事会」に使用されていた。
 だが、実態は少し異なる。
 学園の理事長である護代 真吾(ごだい しんご)の前にいる八人の人物のうち、実際に学園の理事という肩書きを持っているのは二人だけ。その二人もそういう肩書きを持っているだけで、実質的には異なる。
 早い話が、ミハシラ・コーポの経営陣による秘密会議であった。
 心中(しんちゅう)、真吾は呟く。
『株主総会が一ヶ月かそこら先にあるからな。事前に内部に資料を回しておいたが、さっそく噛みついてきたか』
「真吾くん、さっそくだが、聞きたいことがある」
 そう切り出してきたのは、現社長の息子であり次期社長候補の一人、護代 栄一郎(ごだい えいいちろう)だ。真吾より年齢的には一回り上、見た目的には恰幅のよい腹もあって、二回りぐらい上だろうか。ついでにいえば、今回の会議を動議した本人である。
「資料によると、君は学園の北東部にある山林を購入している。購入日は昨年の4月ということになっているが、実際に登記が動いているのは昨年の七月だ。つまり、昨年の株主総会が終わるのを見計らって、山林を購入していることになるね?」
 そらきた。なんてことを思ったが、そんなことは表情にも、まして言葉にも出さない。だが、もちろん、あっさりと認めるわけにもいかない。
「それについては少々おかしな行き違いがありましてね。護代常務取締役もよくご存じの司法書士の先生に一任したのですが、このようなことになってしまいました。その理由、常務取締役ならご存じか、と?」
 この言葉に何か感ずるところがあったのか、栄一郎は一言、唸って黙ってしまった。
『根回しもせず、勢いだけで指摘するからだ。こっちはそちらが手を回して登記を遅らせるように仕組んだことなど、先刻ご承知なのだ。そんなだから、派閥も切り崩しにあって、ヤバイ状況になってるんじゃないか』
 内心で嗤いながら、真吾は平然と答える。
「登記の日付が、株主総会の後になってしまったのは、私としても不本意なことです。本来なら臨時の総会を開くなりなんなりしてこの事実をお伝えするべきでしたが、ややデリケートな問題も含んでおりましたため、このたびの総会で発表させていただくことといたしました」
「なるほど」
 と、よく通る声の主が真吾を見る。
 中城(なかしろ)か、と、思わず真吾は目もとを険しくする。ほかの次期社長候補の中で、もっとも真吾の立場を脅かす可能性を持った者、現専務の懐刀(ふところがたな)だ。実際、専務派の動きはこの中城が加わってから巧妙に、そして狡猾になってきた。今の真吾にとって、もっとも警戒すべき人物だろう。年齢は真吾とさほど変わらない。だが、その根底にあるものは、おそらくは飽くなきハングリー精神だ。その顔つきはどこか狐に似ていると評されることの多い男だが、実際は食らいついたら離さない毒蛇の類(たぐい)ではないかと、真吾は思っている。
「つまり、護代理事長は、この山林の取得について容易に明かせぬ秘密をお持ちということなのですね? 困りましたなあ、金額を見る限り、かなりの高額だ。確かに土地の単価は比較的、安いと言えますが、この面積ですからね。これだけの金額があれば、隣街にある傘下の企業の、下請け工場が操業停止に追い込まれることも無かったのではありませんか? 企業とは人なり。それがミハシラの創業者である、光田(みつだ)、葉多(はた)、白木(しらき)、お三方の共通の理念ではなかったのですかな?」
 口元に冷たい笑みさえ浮かべ、鋭い目で中城は真吾を見た。


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