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作品名:「Saga T 神氣學園封神傳」 作者:ジン 竜珠

第74回 伍之傳 愛情は、知識とセンスを凌駕するか?・肆
「ところで、もう一つ、面白いものが視えたのどすが」
 と、杏さんがイタズラっぽく笑う。
「スイーツパーティーを企画してはるんやなあ」
「……一体、何を予知してんですか、あなたは?」
「ついでに視えてきましたんや。……よかったら、ウチも混ぜてもらえまへんか?」
 混ざる気満々の笑顔で、杏さんは言う。
「……いつ時点での情報を予知したのかわかんないんですが、予定は今度の日曜日ですよ。お稽古事とか、スケジュールは大丈夫ですか?」
「それは問題あらしまへん。幸いその日は終日、空いてますさかい」
「空いて」るんじゃなくて「予知して空けた」の間違いじゃねえのか? なんて思ったけど、口が裂けても言えない。俺は、この企画のおおまかな趣旨を話す。
「なるほど。せやったら、ますますウチも参加する義務がありますなあ」
「え、と。そうなるンスか?」
「もし、五年前のことが今回のことに関係あるんやとしたら、の話ですけどな。少なくとも、八割方、関係ありそうですけどなあ」
「まあ、学園で起きている怪異が全部関連あって、しかも五年前の一件に根っこがあるんだっていう拡大解釈をすれば、ですけどね」
 実際のところをいえば、越田さんや前の冨賀森さん、あと、大事にはいたらなかったが、霧元さんの事件なんか、まだ何もわかってない。霧元さんから入手したあの薬剤だって、まだ分析中……って聞いてるし。せめてあの薬剤の出所がわかればまだ違うんだろうけど、冨賀森さんは未だ「夢遊境」にいるそうだし、越田さんに至っては、なんであんな事になったのか、まだわかってないのだ。まあ、感覚としては、あの菱形の薬剤か、それに近いものが絡んでるんじゃないかってのはあるんだが。
「竜輝はん。ウチの勘ですけどな」
 と、杏さんはずずずず、とお茶をすすってから言った。
「砂堂(さどう)の娘さん、今、所在が知れまへんけど、亡くならはったわけやありませんし、霊査にもかかりまへん。つまり、ウチらから身を隠してるのは間違いないこと。やましいことがないんやったら、そんなことする必要がありまへん」
「うっとうしい世間を嫌って、隠遁してるかも、って可能性は考えないんですか?」
「娘さんは確か、まだ二十五、六やったはず。枯れるにはまだまだ早うおすえ。それに、一、二度逢うただけやけど、かなり化粧っ気と俗っ気のあるお姉さんでしたわ。ああいうお姉さんは、俗世への未練は、そうそう断たれへんのと違いますか?」
「……ああいうことがあったら、人生観かわっても……」
 言いかけて、俺はやめる。杏さんも、少しばかり表情が沈んだようだ。
「……すんません」
 なんとなく空気が重くなった感じがして、俺は頭を下げる。
「……そうやなあ、さっきまでいい空気やったのに、竜輝はんの不用意な一言のおかげで、急に重苦しゅうなったなあ」
「……」
 確かにそうだ。返す言葉がない。
「これは、それなりにお詫びしてもらわんと、なりまへんなあ」
 ……ええっと、なんか妙な流れになってきたな、と。
「ここは、そうですなあ、手作りスイーツの一つもいただかないと、ウチの心の傷は癒えそうにありまへん」
「……ええと、もしかしてそれは今度のスイーツパーティーに招待しろ、と?」
 いや、「もしかして」じゃねえって!
「おや? 招待してくれはるんやろか? いやあ、嬉しいわあ。でも、ええのん? ごくごく身内の集まりみたいやけど? いやあ、催促したみたいで、心苦しいわあ」
 杏さんは、全然「心苦し」くなさそうな笑顔で、そんなことをのたまう。まあ、仕方ないか。こうなった以上、呼ばないわけにもいかないしな。しかし、少しでもチャンスを見つけたら、それを逃さず活かすっていうのは、さすがだな。今度から、この人と会話する時は、かなり用心した方がよさそうだ。


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