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作品名:「Saga T 神氣學園封神傳」 作者:ジン 竜珠

第71回 伍之傳 愛情は、知識とセンスを凌駕するか?・壱
 美悠那は表面上は元気そうに振る舞っている。しかし、どこか、やっぱり落ち込んでいるように見えてならない。こういう時、不用意な励ましは、かえってやってはいけないらしい。
 結局、本人が自分で立ち直るのを待つしかないのだろう。
 なんて思ってたら、あっという間に放課後になった。今日は火曜日、いつだったか、火曜日は「活動日」だとか言っていた。まあ、あちこち食べ歩いていれば、調子も戻るだろう。俺は美悠那より一足先に、昇降口に来た。美悠那とは親しいとは言ってもクラスメイトの範疇を出ない。だから、いつも一緒にいる訳じゃないからな。すると。
「みゅうちゃん先パァァァァァァァイ!」
 なんて元気な声が廊下に響いた。一年生の乾ありすだ。振り返ると、階段を降りてきたばかりの美悠那の腰に、ありすが抱きつきタックルをぶちかましているところだった。
「今日は、どこに行くデスか?」
「ああ、ありすちゃん」
 と、美悠那は笑顔を向けると、ありすの頭を撫でる。……やっぱり元気がないように感じるな。
「ごめん、あたし、今日はお休みするね。会長の野々田さんには伝えてあるから。今日のスケジュールは……。ごめん、集合した時に聞いて? あたし、聞いてないから」
 そして、靴を履き替え、帰って行った。
「やっぱ、元気ねえな」
「仕方ないですよ」
 思わず呟くと、いつの間に来ていたのか、ありすが俺の隣に立って美悠那の背中を見送っていた。
「なんだ、越田さんって、そんなに美悠那にとって重要な人なのか?」
「ええと、幼馴染み以上ではない、と思います。でも……」
 と、少し間を置く。
「イケメン先輩だから言いますけど」
 と、俺を見上げる。……覚えてやがらなかったのか、俺の名前。
「私、みゅうちゃん先輩と同じ中学出身なんです。で、私が一年の時、みゅうちゃん先輩のお父さん、病気で死んじゃったんです」
「……そうか」
「前の日まで、まったく普通に生活してて、で、翌日突然倒れて入院して、そのまま……」
 なるほど。前の日まで元気だったのに、突然倒れて入院して、そして亡くなられたら、その衝撃は、いかばかりか。だから、直前まで元気だったのに、いきなり入院、なんて事態になると、落ち込むのか。「そういうのとは違うからな」と、言ってやりたいが、それは無理だし、また断言もできない。越田さんが無事、社会復帰できるかどうか、俺にもわからないのだ。
「そうだ!」
 と、俺がしんみりしている横で、ありすが頓狂な声を上げる。
「私とイケメン先輩とで、スイーツ作りましょう、スイーツ!」
「……すまん、話が見えねえ。あと、俺の名前は、天宮竜輝、な」
「だから、私たちでスイーツ作って、みゅうちゃん先輩に食べてもらうんです! 私たちの愛情で、先輩を元気にするぞ、おー!」
 と、右手の拳をどこかの独裁者ばりに天高く掲げるありす。
 こいつはあれか、素で脳内麻薬が垂れ流しになってんのか? いいな、それ。歯医者とか行ったら、便利そうだ、痛くなくて。
「いいアイディアだね、それ」
「珠璃、いつからいた?」
 気がつくと、いつの間にやらすぐ傍に珠璃がいた。ありすといい、珠璃といい、俺の周りは忍者ばっかりか?
「竜輝、弱ってる時に優しくするのって、女性には厳禁だよ。この意味、わかるよね?」
「わかるかッ! ていうか、何の話だ?」
「おおおぅぅぅ! 生徒会長さんじゃないですか! 会長さんも、みゅうちゃん先輩にスイーツ作るですか?」
 スイーツ? 珠璃が? 想像できねえ、ていうか、こいつ料理とかできたっけ?
「あ、竜輝、もしかして失礼なこと考えてないか? ボクはこっちには一人で出てきてるんだよ。料理なら、任せてもらえないかな?」
「へえ、そうなんだ。お前のことだから、誰か、たらしこんで作らせてんのか、と思ったぜ」
 俺の言葉に、珠璃が「ポン」と、右拳で左掌を打つ。
「待て待て待て待て! なんだ、その『その手があったか』みたいなリアクションは!?」
「いや、いいことを教えてくれたね、竜輝。さっそくやってみるよ」
 本気だか冗談だか、わからない笑顔で、珠璃がサムズアップして見せた。


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