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作品名:「Saga T 神氣學園封神傳」 作者:ジン 竜珠

第64回 肆之傳 そして蝶は舞う・陸
 学園が休講になった本当の理由は、言うまでもないな。土曜日の夜、俺が派手にやらかしたからな。あのあとで凉さんから聞いた話だが、実習棟の屋上と学食前の廊下、そして学食の中は、えれぇことになってたらしい。校舎の外壁につけられた「気弾」による破損は、実は思ったほどのものではなく月曜日の夕方には補修が終わったそうだ。しかし、実習棟の屋上と学食はちょっと、すぐに直せる状態ではなかったらしい。
「あたしも月曜日に見させてもらったが、学食前の廊下と、中の床、見事に抜けてたぞ。学食前の廊下なんて、床下のコンクリがブチ壊れて大穴が空いてたし。学食の床も、リノリウムが剥がれてコンクリが砕けてた」
 これ言ってる時の凉さんが、どこか楽しそうだったのが気になるが、まあ、俺のせいだしな。多分、あの時俺が周囲に張っていた「氣」の、保護領域自体の「力場」なんかのせいで、物理的に床をぶち壊してしまったのだろう。確かに昨日、学食前はバリケードだのブルーシートだのが張られて通れなくなってたもんな。
 水曜日は、学食内に関しては利用可能な程度には直ってたそうだから、突貫工事だったんだろう。まだ学食前や実習棟の屋上も残ってるわけだし、それを考えると関係者の方々に申し訳ない気持ちで一杯だ。
 それはそうと。
 休講が開けた金曜日、朝から美悠那がなんだか元気がなかったのだ。それとなく聞いてみると、「先週の土曜日に会ったばかりの幼馴染みの星(せい)ちゃんが、入院した」のだという。
 俺は、放課後、本校舎の屋上に上がって、何となく茜色に染まっていく景色を眺めていた。二面に分かれたグラウンドでは陸上部と野球部が活動を開始している。
 越田さんは、体調を崩しての検査入院ということになっているようだ。入院したのは冨賀森さんに続いて二人目。冨賀森さんの時は、はっきりと「病気で入院」としてしまったから、冥神の方でも配慮せざるを得なかったらしい。さすがに短期間で三年生が二人も病気で入院ということになると、いらぬ噂も立つだろう。そんなわけで検査入院ということにしたらしいが。
「検査入院だったら、病気にもよるんだろうが、せいぜい一、二週間ってところだよな、長くても。その間に、越田さんが復帰できるって踏んでいるのか」
 いや、そうならなかったら、そのまま「入院」ということにするだけだろう。現に冨賀森さんはすでに三週間は過ぎているが、まだ「退院」していない。だから、越田さんもこのまま、入院ということになるであろうことは、想像に難くない。
 美悠那は、なんだか落ち込んでいた。「竜輝も会ったよね、土曜日、星ちゃんと。元気そうだったのに」と、まるで重病に陥ってるのが前提のような口ぶりだったのだ。普段、突き抜けるほど元気な奴に限って、こういう時にもろいってことか?
 とにかく、俺は自分の未熟さをイヤというほど思い知った。うまく捌ければ、校舎だってボロボロにならなかっただろうし、越田さんや冨賀森さんだって……。俺は、ここでちゃんと役目を果たせるんだろうか? 迷惑をかけるだけかけて、それで何にもどうにもならないまま、最悪の結果になってしまうんじゃないか。そんな不安で圧し潰されそうになる。
「よう」
 と、不意に声がした。
「零司さん」
 そこにいたのは、零司さんだった。
「緑茶でよかったよな」
 と、零司さんは自販機で買った緑茶の紙パックを俺に渡す。
「いただきます」
 パックを受け取って一礼すると、俺はストローを挿した。
「どうした、黄昏れて、さ?」
 零司さんは自分のほうじ茶のパックにストローを挿して笑顔を向けた。俺は、さっきまで抱えていたことを、零司さんに打ち明けた。


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