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作品名:「Saga T 神氣學園封神傳」 作者:ジン 竜珠

第63回 肆之傳 そして蝶は舞う・伍
 浦田が呼び出した式神は、鎧を着た神将形(じんしょうぎょう)だが、その鎧の姿は古来から伝わるそれではなく、どこかSF映画のそれに似ている。そして、頭部は人ではなく、虎そのものであった。
 大通りを、駐車場へとエスコートする行動に印契を紛れ込ませ、式神を移動させる。まず、紗弥の目の前を横切らせる。だが、そんな異様なモノが見えていないかのように、女は普通に歩いている。それとなく表情を窺ったが、別段、式神を目で追っているようでもない。
 それでは、と、浦田は式神に次の行動をとらせる。彼の持っている式神は、通常、不可視であり触ることもまた物理的アクションをとらせることもできない。そこで、不可視のまま物質化率を上げる。そして、紗弥の横に移動させた。そのまま移動すれば、間違いなく、肩ぐらいぶつかる。もし女に何らかの超感覚があれば、それを避けるだろう。そして紗弥は。
「! あら?」
「どうかしましたか?」
「ええ、何かにぶつかったように思ったんですけど、何にもないですよね?」
 紗弥は、周囲を見回し、しきりに首を傾げている。
 どうやら、見えていない上、感知できていないようだ。だが、芝居かも知れない。浦田は最後のチェックをかけることにした。
「それでは、ここで失礼しますわ」
 バーから二百メートルほど離れたところにある市営駐車場の前で、紗弥が一礼する。
「お気をつけて」
 浦田も礼を返す。紗弥がこちらに背を向けて歩き出した時、さりげなく口の中で小さく「呪」を唱えた。その呪文に従い、高い物質化率のままの式神が、紗弥の目の前で剣を抜き振りかぶる仕種をする。そして、一気に剣を振り下ろした!
 だが、紗弥は身構えるようでも避けるようでもない。そして剣はそのまま、紗弥の左の肩口をかすめた。ここで、初めて紗弥が立ち止まる。
「どうかしましたか?」
「え? い、いいえ、なんでも。なんでもありませんから!」
 振り返った紗弥はかすかに、動揺しているようだ。どことなく、慌てているようにも見える。もしかして式神の動きを感じたのか? だが。
 どうやら、感知できていないようだ。
 そう確信し、「そうですか」とだけ言って、浦田は式神を手元に戻す。そして、駐車場に入る紗弥を見送って、自分も車を止めているコインパーキングへと向かった。

 車に乗った紗弥は、乱暴にドアを閉めシートに背を持たせた後、憤慨したように言い捨てる。
「思った以上の小物の俗物だわね! おまけに野心家。一番、手に負えないタイプだわ!」
 そして式神の剣がかすめた肩口に手を当てる。
「しかも、変態! あの野郎、私が式神が認識できているかどうか確認するために、最終的にブラの肩紐を切らせるなんて! もうサイッテー!」
 さりげなく、そう、例えばつまずいたフリでもして剣を避けようかとも思ったが、下手な動きでは怪しまれる。どうせ肉体的霊的に傷つけるつもりは感じられなかったから、寸止めぐらいだろうと思ったのが、甘かった。できるものなら、下着代を弁償させてやりたいが、それは叶わない。
「いずれ、何らかの形で落とし前はつけさせないとね」
 そう低い声で呟いた紗弥は、エンジンをかけ、車を発進させた。


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