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作品名:「Saga T 神氣學園封神傳」 作者:ジン 竜珠

第51回 参之傳 君よ、星を掴め・拾参
 出会った瞬間に臨戦態勢っていうのは、実に久しぶりだ。俺は静かに呼吸を整え、ファイティングポーズを取りながら、言った。
「参考までに聞いとく。どこのどちらさんかな?」
「フン。三才の体現者といえど、やはり、所詮は若造か、口の利き方を知らぬと見えるな」
 そう言ってそいつは鼻で嗤う。
「聞け。我こそは天香香背男(あめのかがせお)なるぞ!」
「ああ? 何言ってんだ、お前?」
 乱暴な言い方をさせてもらえば、今の越田さんは心霊を降ろしたいわゆる「帰神状態(きしんじょうたい)」にある。そんな時、降りてきた心霊は大体が高貴な神の名を名乗る。それを審判し化けの皮を剥ぐのが「審神者(さにわ)」だ。
 しかし、どうも審神者をやっていられるような、のんびりした状況ではないらしい。
「天香香背男というと、あれかな、『天の悪神』という……」
「ふん、笑止!」
 俺の言葉を遮り、そいつは言った。
「時の体制に逆らえば、即・悪神か! 後世の人草(ひとぐさ)の間では、『勝てば官軍』なる言葉があるそうだが、まさにそうだな」
「……何か言いたいことでも?」
 ちょっとキレそうになったが、相手の言いたいことを言わせるのも、手の一つだ。(自称)天香香背男は語り始めた。
「葦原中津国(あしわらのなかつくに)を平定する際、きれい事だけではすまなかった。それは容易に想像できるであろう? 平定とは言っても、早い話が侵略だ。我はそれに対し、諫言(かんげん)した。だが、時流と趨勢には勝てず、我は逆賊の汚名を着せられた。我は、我に味方する諸侯とともに戦った。だが、その戦いが結局のところ民草の疲弊を招く。我は和睦の道を選んだ。もちろん、諸侯は反対した。戦いはわずかながらだが、我に有利に運んでいたのだからな。だが、高天原をすべて向こうに回して戦い続けるなど、愚の骨頂! なればこそ、我は潔く身を退いたのだ! だというのに、後世、悪神呼ばわりされようとは! 我に連なる御魂に申し訳が立たぬ!」
 さて。間単に言い分を見てみよう。葦原中津国つまり地上界を平定する際、天香香背男は反対した。そのために逆賊とされ、攻められた。彼は味方とともに戦ったが、その戦が民を疲弊させると考え、和睦することを選んだ。だが、のちに悪神と呼ばれることになった。そのせいで自分に連なる御魂に対して、申し訳ない、と。
 まあ、よくできた話だ。おそらく越田さんの頭の中にある知識が、ブレンドされてできあがったストーリーなのだろう。
 本来の天香香背男については、記紀でも深くは触れられていない。ただ、「経津主神(フツヌシノカミ)や武甕槌神(タケミカヅチノカミ)でさえ倒せなかった星の神」とされているに過ぎない。だから、様々な解釈が可能だ。
 今の話もよく考えると、少しおかしい。天界の話だか地上の話だか、混乱しているのだ。ここから考えても、これが真正なる神懸かりではなく、越田さんの変容した人格が作り上げた物語だということがわかる。だが、彼が異常ともいえる「なにか」に支配され、尋常ならざる「力」に包まれているのは確かだ。
「こうなるのならば、我は和睦するのではなかった! 全力をもって我の正しさを貫き、敵を完膚無きまでに叩きのめすべきであったのだ!」
 拳を振るいながら演説する姿は、どこぞの独裁者のようでさえある。
「ご高説どうも。というところで、おとなしくお帰りくださると助かるのですが?」
 俺の言葉に、ゆらりとこちらを向くと、そいつは、怒気を孕んだ声で言い放った。
「できぬな。今こそ我の復権の時なのだ!」
 やれやれ。審神者するまでもなかったのは有り難いが、結局こうなるか。
「言っておくが、俺は戦うべき時には戦う男だぜ?」
 そう言って俺はそいつを挑発する。
「よかろう。まずは汝(うぬ)を血祭りに上げ、我の復活の狼煙としよう」
 そいつが、手の中から、銅剣に似たシルエットの光を出現させた。


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