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作品名:「Saga T 神氣學園封神傳」 作者:ジン 竜珠

第50回 参之傳 君よ、星を掴め・拾弐
 とりあえず打てる手がなかった。越田さんは、自宅にはいなかったし、霊的探査には.まったく引っかからなかった。
 明らかに何者かによって「隠されている」状態だ。あとは目視による捜索だが、まあ、俺はその手のプロって訳じゃないからな。
 なので、メモにあった「午後九時」の星との邂逅にかけるしかない。もしかすると、その状態では手遅れなのかも知れないが、タッチの差でセーフってこともあるだろう。
 俺は実習棟屋上の給水タンクの上で胡座(あぐら)をかき、周囲の気配を探った。
「あいかわらず、読めねえとこだなあ、ここは」
 周囲の『気』が妙に調律されているせいで、普通の人の、普通の動き程度なら、まったくといっていいほど感じ取れない。これが幽体が飛び込んできたの、和魂が出現したの、とかいう『ちょっと』かわった出来事なら確実に感じ取れるんだが。
 腕時計を見ると、午後九時。
「そろそろか。……ン!? 誰か、来た!?」
 不意に、屋上階の扉が開き、誰かが現れた。このシルエットは警備員じゃない、多分、部外者か学生だ。……ちょっと待て!? ここの物理的セキュリティは、完璧だったろ!? ここへは「跳んで来た」俺ならまだしも、なんで普通に敷地や校舎の中を、歩いて来られるんだ?
 まあ、それはあとで確認しよう。俺は息をひそめ、侵入者を見た。
 越田さんだ。やっぱり来たか。一体、これから何が……?
 そう思った時だった。突然、南の空に強烈な光が現れた。まるでサーチライトのようだ。だが、何より重要なのは、この光が誰にでも見える普通の光ではないことだ。
 いわゆる霊光というヤツである。でも。
「あれ? あれって、もしかして……」
 ちょっとした疑問がわき起こった時だった。その光は、まばゆいだけではなく、俺の全身に作用する圧力を持って迫ってきた。
「と、ちょ、ちょっと待て……!」
 人ならざる光にそんなことを言っても、どうなるものでもない。まさか強烈な霊圧を持った霊光に出くわすとは予想していなかった俺は、体を支える間もなく、吹き飛ばされてしまった。

 星が見える。
 志賀さんに渡された薬を服用してから、体の、いや、精神のコンディションがすこぶるいい。頭の中の霧が晴れていくようだ。セキュリティが厳重な校舎内にどうやって入ろうかと思ったけど、何の問題もなかった。「入ることができる」と思ったら、すんなり入れたのだ。
 そう、どうしてもここに来なければならない。ここに来なければ、星は見えない。そんな気がしてならなかったのだ。
 そう思って実習棟の屋上に上ったら、星が見えた。それはシリウスよりも明るい光。夜の太陽といってさえいいかもしれない。この光に比べれば、月はやはり太陽光を反射する鏡に過ぎないのだ。
 ああ。僕は今、新たな星に出会うという歓喜の時を迎えているのだ。星の周囲には虹の如き輻射が輝き、こちらに投げかけてくる。
 そして歓喜と感動の中、僕に声が届いた。
『我の声を聞け、我を受け入れよ』
「……え?」
『我が姿を見、声を聞くものよ、我を受け入れよ』
「な、なにを言って……」
 ここへ来て、歓喜の中にわずかに恐怖が入り交じってきた。
『汝、本当の己を隠しているであろう? 本当の自分を受け入れること、それが我を受け入れること』
 なにを言っているのだろう? 大体「受け入れる」って、なんのことだ?
『汝、我と同じ境遇にあるものよ。故に汝は我と引き合った。汝が望みは、我との合一。即ち、己が立場の復権! 己の正当性の主張!』
 その時、僕の心の中に黒くわだかまる「何か」が立ちあがる。その「何か」は、わずかに発生した恐怖を駆逐し、僕の心を高揚で満たした。
 そうだ! 僕は僕の「本当」と向き合わなくちゃならない! 僕の本心を認めてあげなくちゃならないんだ!
 僕は大いなる決意と、それに勝る歓喜……おそらくは「理解者」を得たことに対する歓びをもって、「声」と「光」を受け入れた。

 吹き飛ばされた俺は、空中で姿勢を制御し、着地した。そして再び跳躍し、研究棟の屋上に着地してそこをジャンプ台のようにして跳躍し、実習棟の屋上に着地した。
「おや? 珍しい。『天地人』三才の竜の氣を操るものがいるとは」
 屋上に立ってそんなことを言った影は、越田さんの形をした「何か」だった。


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