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作品名:「Saga T 神氣學園封神傳」 作者:ジン 竜珠

第44回 参之傳 君よ、星を掴め・陸
 美嶋(みとう)っていうのは市の南西部にあるエリアだ。中心地区の宝條に接しているから、なかなか発展したところだが、どこか、鄙(ひな)びた雰囲気もある、ちょっと不思議なところだ。ちなみにこのすぐ南に美嶋南(みとうみなみ)っていうエリアがあるんだが、こっちの方が開発が進んでいる印象がある。市電が通っているからっていうのもあるんだろうか?
 約束の美嶋南の市電駅までの、時間の感覚は、大体わかる。いつも使ってるからな。いろいろ試したんだが、結局、乗り換えの時間を考慮しても市電を経由した方が、そのままバスで行くよりも早いってことがわかったんで、通学には市電を利用している。ちなみに美嶋南と学園がある昴(すばる)は隣り合っている。
 で、俺は十五分前には待ち合わせ場所についたんだが、そこにはすでに美悠那が来ていた。なぜか制服姿で。
「……えと、あの。美悠那、さん? なにゆえ制服なのですか?」
 思わず敬語で聞いてしまうあたりに、俺の混乱ぶりがわかっていただけるだろうか。
「いや、ほら、あたしの場合、研究会活動だから!」
 と、Vサインを出す。そのVサインに、いかなる意味があるのか、五十字以内で簡潔に説明して欲しいな。
「あ、あとね、そのスイーツのお店のパティシエがね、制服の女子高生には、サービスチケットくれるっていう噂があるの」
「……大丈夫か、その店?」
 何日かしたら、地元警察の生活安全課とかが内偵してたり、なんてことねえよな?
 そんな俺の心配をよそに、美悠那はバッグからレポート用紙を出す。
「実際には、お店に着いてから渡すけど、今、簡単に説明しておくわね」
「は? 説明?」
「研究会活動って言ったでしょ?」
「……」
「質問はあとで受け付けるから。え……と。まず一枚目、ここにスイーツの名前を書いて、評価は基本的に五段階評価ね。この辺は竜輝の感性でいいわ。本当は細かな基準があるんだけど、竜輝は臨時会員だから。そこまで気にしなくていいわ。で、その下に詳しい評価を書いて? 例えば、甘すぎるとか、デコレーションが今イチとか、ネーミングセンスがダメとか、紅茶にピッタリとか。あと、その下の欄はスイーツの写真。でも、これはあとで貼り付けるし、あたしが撮るから竜輝は撮らなくていいよ」
「質問」
「はい、竜輝くん」
「その『臨時会員』ていうのは、暫定と判断してもよろしいですか?」
「基本はね。でも働きいかんによっては、正会員として迎える用意もあることを、ここに付け加えておくわ!」
 なんだか、妙に嬉しそうに美悠那は言う。
「……」
 なんていうか、美悠那のカレシは、えれぇ苦労してんじゃねえかって気がする。同情するぜ。
「二枚目ね。これにはお店の印象を書いて? これも竜輝が感じたままでいいわ」
 一通りレクチャーをすると、美悠那はケータイを見る。
「十時三十五分、か」
「なあ、そのスイーツパーティーってのは、何時からなんだ?」
 とても重要なことだ。
「ン? 十一時半から、だけど?」
「……ごめん、もう一回言ってくれるかな?」
「内覧会は十一時半からだよ」
 その瞬間、俺の脳内はフル回転を始めた。そして、一つの答えを導き出す。
「有り得ねえだろ、その時間?」
 午前十一時半といえば、昼飯の前だ。そんな時間帯に、スイーツのパーティー?
「大丈夫だって! スイーツで充分おなかいっぱいになるから!」
「いや、そういう問題じゃなくてな。スイーツで昼飯済ますって、人間としてどうかって思うんだが」
 俺の煩悶に美悠那は、なぜか胸を反らせて答えた。
「それなら、大丈夫! 簡単なランチも出るの。そのあとで、山のようにスイーツが!」
 明後日の方を見ながら胸の前で手を組み、瞳に星を煌めかせ、口からは、よだれが垂れていた。
 一応、人気投票上位なんだから、誰に見られてもいいように、普段の行動は注意しとけよ……とは思ったが、まあいいや。


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