小説&まんが投稿
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:「Saga T 神氣學園封神傳」 作者:ジン 竜珠

第42回 参之傳 君よ、星を掴め・肆
 その夜。
 星一は自宅で望遠鏡を覗いていた。例の星を捜すためだ。だが。
「……やっぱり、見えないか。見間違い、だったのかな?」
 一般に人工衛星の残骸や流星の類(たぐい)を「UFO」と誤認することは、よくある。もしかすると、自分もそうだったのだろうか、と星一は肩を落とした。
「まあ、新しい星とか、超新星なんて、そう簡単に見つかるもんじゃないしなあ」
 そして夜空を裸眼にて見上げる。そこにあったのは。
「え!?」
 強くきらめく一つの星。その輝きは一等星どころの騒ぎではない。おおいぬ座のシリウスがマイナス一.五等だが、それに近いのではないか。慌てて望遠鏡を覗こうとした瞬間、星はかき消すように見えなくなってしまった。
「……あれ?」
 もう一度、裸眼で空を見上げるが、星は見えない。いったい、どうなっているのか。
 不思議な面持ちで星一は、天を仰ぎ続ける。
 だが、彼の瞳が、新たな星を写すことはなかった。

 翌日の夜。塾からの帰り道だ。
 星一は、夜空を見上げる。だが、この塾は美嶋南(みとうみなみ)にある。美嶋南は中心部の宝條(ほうじょう)ほどではないものの、それでも、宝條に接していることもあって発展した商業地区だ。ネオンの光で星など見えない。
 時刻は午後九時を十五分ほど過ぎている。バス停に直行したつもりだったが、どういうわけか児童公園の方に回ってしまったらしい。夜遅いこともあって、公園は無人だった。
「変だな? こっちに来るつもりなんてなかったのに」
 首を傾げ、バス停の方へと歩き出す。その時だった。
「あなた、何か悩みがあるわね?」
 綺麗な、それこそ鈴を鳴らしたような、女の声がした。振り返ると、いつの間に来たのか、そこには若い女が1人。公園に建てられた防犯灯に寄りかかるようにして立っているその女は、年の頃なら二十代前半だろうか。着ている服はごく普通の、濃紺のスーツといってもよかったが、スカートに入ったスリットは、きわどいというレベルを越えていた。実際、女が穿いている黒いストッキングと太ももの境さえ見てとれる。
 黒い髪は長く、腰までありそうだ。その面貌はどこか猫科の猛獣を思わせ、艶っぽい笑みを浮かべているせいか、危険な香りがするようだ。
 星一は直感的に思う。危険だ、と。それは不思議な感覚だった。強いて言うなら、生物としての本能が危険信号を発しているような、奥深いところからの警告にさえ感じられる、そんなものだった。
「そんなに警戒しなくてもいいじゃない。あたしはね、こう見えても占い師なの。あなたが、とても深刻な悩みを持っているのがね、『視える』のよ」
 星一の心の動きを見て取ったように、女は微笑む。さっきまでとはうってかわって、穏やかな笑みだ。そして、とまどっている星一が動くより早く傍まで寄ると、耳元に囁くように言った。
「星を見たくない?」
 瞬間、背筋を氷が駆け上ったように感じた。全身の体毛が逆立ち、肌が粟立つ。
 思わず、女を見た。女は再び蠱惑的な笑みを浮かべていた。
「あ、……あ、う……」
 言葉が出てこない。金縛りにも似た状態の星一に、女は再び言う。
「あなただけの『星』、見たくない?」
 それが何を意味するか判断する前に、星一は金縛りを解き、バス停に向かって走り出していた。
「もし星が見たければ、明日の夜、ここで待ってるわよ」
 走っていたにも拘わらず、耳元に届いてきた女の声を、反芻しながら。


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 小説&まんが投稿屋 トップページ
アクセス: 125