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作品名:「Saga T 神氣學園封神傳」 作者:ジン 竜珠

第39回 参之傳 君よ、星を掴め・壱
 中間考査も終了した五月三十日。この日は、教師による採点準備や諸々の事情で学園は休校だ。だが、申請が受理されれば、一部の部活や研究会に限るが、活動することができる。
 天体研究会『唯一』の会員、三年生の越田 星一(こした せいいち)は、正午前、実習棟の屋上で空を眺めていた。
「ども、星ちゃん」
「? 美悠ちゃん?」
 突然、背後から声をかけた声に振り向くと、そこにいたのは二年の鳳 美悠那、星一とは幼馴染みだ。不意にやってきた幼馴染みに驚きを隠せず、星一は思わず、どもる。
「ど、どうして、こ、ここに?」
「本校舎の三階から姿が見えたから。何やってんのかなあ、って」
「そうなんだ。……今日休みだよね、美悠ちゃんはどうして学校に?」
「新聞部にね、スイーツ研(うち)の情報を提供に。学校に詰めてるって言ってたから」
「ああ、そうだったね」
 と、星一は苦笑する。
「新聞部は毎月一日、十日、二十日に定期紙を発行してたっけ。確か定期試験のスケジュールによっては、日付を後の方にずらすって聞いたけど、今の部長が凝り性なんだったよね」
「プロの世界なら、この程度なら『有り余ってる』ウチに入る時間だー!! って、言ってたよ」
 と、二人して、笑う。
「ね、マジで、何やってたの? 今、昼間だから星、見えないよ?」
「ン? ああ、そうだね。確かに今は星は見えない。なんていうか、なんとなく、ね」
 と、再び空に目を戻す。それにつられたか、美悠那も天を仰いだようだ。
「空、青いね」
 と、柔らかな声で言った。
「……星がね、見えなくなったんだ」
 星一が唐突にそんなことを言うと、美悠那がふと顔を向けて首を傾げた。
 それに気づき、星一も美悠那を見た。
「五、六日前なんだけど、新しい星を見つけたんだ。明るさから考えて、超新星だと思う。嬉しくなっていろんなところに連絡を取ったんだけど、でも、国立天文台も民間の機関も、そんなモノは捕捉していないって言ってきてさ。そんなはずないって思っているうちに、僕にもその星が見えなくなった」
「星ちゃん……」
 美悠那が、沈痛な表情になる。だが、すぐに明るい表情になって言った。
「大丈夫だよっ! きっと、雲とか影とか、そんなんで見えなくなってるだけだって!」
「あいかわらずだなあ、美悠ちゃんは。昔と変わらないや」
 と、苦笑いを浮かべ、星一は頬をカリカリと掻く仕種をする。
「……ね、星ちゃん」
「ん?」
「星ちゃんが地学部を退部して、天体研究会を起ち上げたのって、やっぱり水谷(みずや)さんとのこと……」
「美悠ちゃん」
 と、美悠那にみなまで言わせず、星一は言う。
「地学部で『できること』と、僕が『やりたいこと』との間に、著しい乖離(かいり)があった。そういうことだよ」
 その言葉に偽りがない、といえば嘘になるかも知れない。確かに、二年の終わりまでは星一は地学部にいて、後輩の部員・水谷 美貴子(みずや みきこ)と軋轢(あつれき)を生じた。事実は異なるが、恋の告白をしてきた美貴子に対して星一が「ひどい振り方」をしたかのような噂が立ってしまったのだ。これに関しては、美貴子は「被害者」の立場を取った。
 どういう形だったにせよ、星一が美貴子を振ったことに変わりはなく、また、後輩である美貴子にはまだ「先」もある。結果、地学部に居づらくなった星一は、美貴子に気を使うということもあったが、三年に進級したのを機に、地学部をやめ天体研究会を起ち上げた。幸い、地学部以外では星一の人望は厚く、同好会設立に必要な「五名以上の人員」も、「名前だけでいいなら」という条件ではあったが、すぐ集まった。
 かくして今、星一は実質的にたった一人の天体研究会会員として活動しているのだ。


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