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作品名:「Saga T 神氣學園封神傳」 作者:ジン 竜珠

第38回 番外之傳 爆弾魔は独り嗤う・陸
『だからさ、数学のオオクワガタのヤツ、陰湿すぎるんだよ!』
「あ、それわかるわかる! ボクも一年の時に教わったけど、あれって、ちょっとおかしいよね。式が正解でも解答が違うなら、点数に数えないとか言っておきながら、かわいがっている生徒だったら、半分だけ点をあげるなんて、サイテーだよ!」
『それに世界史のパラボラアンテナ、受験に関係ないクラスは、あからさまに手を抜くなんて、教師の風上にも置けないよ! おかげで定期考査の時、どれだけ苦労させられたか!』
 俺たちは幽体の金縛りを解き、車座になって話をしていた。爆弾の話を聞くはずだったんだけど、どこで、こんな話に……?
『だからね、僕は思ったんだ、鉄槌を下すべし! それに化学で天才のこの僕が、不得意とはいえ他の教科で点数悪いなんて、許せないしね。だから、爆弾を仕掛けたんだ、みんながバカになるガスを。いうなれば、バカ爆弾だね! 僕はちゃんと『ワクチン』を飲んでいるから大丈夫だけど! アッハッハッハッハ』
 楽しそうに笑う先輩。言うに事欠いて、バカ爆弾ときやがった。……なにこれ? 七十八番目の不思議?
 珠璃は笑顔のまま聞いた。こめかみの青筋は見なかったことにしよう。
「そのバカ爆弾だけど、その口ぶりだと、もう仕掛けたみたいだね?」
『まあね。今は、ちゃんと作動するかどうか、心配で見に来たんだ』
「ていうことは、夜のうちに作動するんだね?」
『いや、その表現は正確じゃないね。作動するのは日中だ。もし何かの手違いで、夜のウチに整備されてしまうと……。…………あ』
 どうやら口を滑らせてしまったようだ。
「整備されると、どうなのかな?」
『……』
「アレ? 急にだんまりなんて、どうしたのかな?」
『……』
 珠璃が指の骨を鳴らす。おそらくファンクラブの一つも結成されてるだろうが、中にはこういう珠璃に萌える輩も多いに違いない。前言撤回。ベスト三以内は安泰と見た。
「まいったなあ、ボクはそんなに気が長い方じゃないんだ」
 そう言って、幽体の首を「きゅっ」と絞める。……右手一つで。ついでに笑顔のまま。「きゅっ」のあとにハートマークがついていたように思ったが、多分、気のせいだ。
「そんぐらいにしとけよ。幽体とはいえ、『首絞められたら苦しい』って本人が思ってたら、苦しいからな」
「そうだね」
 と、珠璃が手を離す。
 気のせいか、幽体が震えていたように見えた。

 かくして「バカ爆弾」は撤去された。三Aの教室の空調に、固形物が詰め込んであったのだ。おそらく空調自体の熱や風で気化し、教室に充満する仕掛けだったのだろう。この物質については詳しく調べてもらわないとわからないが、多分「バカ爆弾」なんてシロモノじゃないと思う。
 あれから、一時間ほどしか経っていないが、それでもいろいろわかったことがある。
 まず一つ。三Aの空調が、放課後直前になって少し不調だというので校務員さんに連絡がいっていたらしい。ただ、連絡を受けた校務員さんが今日は午後からお休みを取っており、どういうわけか申し送りも不完全だった。ということで、点検は明日の早朝にする手はずになっていたそうだ。だから、どちらにしても明日の授業が始まるまでには、固形物は撤去されていただろう。
 二つ目。あの幽体はどうやら、無意識に抜け出たタイプのものらしい。つまり本人には明瞭な意識がある状態だということだ。いわゆるドッペルゲンガーのような状態といえるだろう。それだけこの仕掛けが気がかりだったと考えられるが、ほかにも離魂してしまう要因があるような気がしてならない。これについては本体である霧元先輩に直接聞いてみよう。
 そして三つ目。例の密告者は、どうやら霧元先輩の和魂(にぎみたま)だったらしい。だとすると、「今夜、動きがある」という言葉は、先輩の幽体が学園にやってくることだったと考えられる。もしかすると、ほかにもいろいろ伝えてきていたのかも知れないが、珠璃もそこまで集中していたわけじゃないからな。
 ていうか。
「俺さ、ホントこんなことのために転校してきたんじゃねえんだけどなあ」
 俺のボヤキに、珠璃は苦笑いで応えるだけだった。



(番外之傳 爆弾魔は独り嗤う・END)


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