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作品名:「Saga T 神氣學園封神傳」 作者:ジン 竜珠

第33回 番外之傳 爆弾魔は独り嗤う・壱
「フフフフ。これで、これで我が野望は叶う! 素晴らしい! 我が同志・冨賀森の残せし遺産、これほど有用なるものとは思わなんだわ!」
 深夜、自宅の自室で霧元 雪三郎(きりもと ゆきさぶろう)は、こみ上げる笑いを抑えることができなかった。彼の目の前にあるは、一枚の構造式。それに見入る雪三郎は心の底から打ち震えている。
「ああ、美しい。これほど美しい構造式がこれまでに存在し得ただろうか。これに比べれば、ベンゼン環など、幼児の落書きに過ぎぬ!!」
 そして、ふと嘆息する。
「ああ、それなのに、発案者たる同志冨賀森が、病気で長期療養とは。この構造式構築は、かくもその心身を削っていたのだな! ……よかろう! その犠牲、決して無駄にはせぬ! この僕が、必ずやこの構造式の威力を示してあげよう!!」
 むせび泣きながら、雪三郎はデスクの引き出しを開けた。そこにハンカチにくるんだ何かがある。ハンカチを開くとそこにあるのは金属のペンケース。さらにその中に、ティッシュにくるまれたものがあった。
 黒くて平らな菱形の物質。それが真空パックのように透明な樹脂にパッケージされている。そのパッケージには文字とも記号ともつかない「何か」が白い色で一つ、記してあった。
「同志冨賀森から譲渡されたエリクシルは、残り三つ。有効に使わねば。そして、彼が復帰してきた暁には、このエリクシルについても聞かねばならぬ!」
 そして、再び構造式を記したレポート用紙を眺める。
「できる。僕になら!」
 決意を胸に、雪三郎はまた、笑った。

「は? ちょっと待て。今、なんて言った?」
 水曜日の放課後。学園の力場の見回りも兼ねて適当に時間を潰したあと、帰ろうと教室に戻ると、残っていた二人のクラスメート女子が、何やらお喋りしている。聞くとはなしに聞いていたら、来週水曜日から中間考査が始まるっていうじゃないか!?
「え? 天宮くん、知らなかったっけ? オリエンテーションとかで話、なかった?」
「う、あ。あったっけ、そんなの?」
 やべ。なんか、転校初日の朝、職員室で、学年主任とかいうおっさんから、それらしい話を聞いたような気がする。ていうか、もらったじゃん、行事予定表。
 ……それどころじゃなかったもんなあ、こっち来てから。
 じゃなくて!!
「ねえ、よかったら、一緒に勉強する? 私でよかったら、教えてあげるよ?」
「えー? あんたが教わるのがオチでしょ?」
「そういう貴代子だって、私と、どっこいどっこいじゃん!」
 再びお喋りに夢中になったのを見計らい、俺はカバンを手に教室を出た。
「まいったなあ、テスト、どうしよう?」
 赤点なんてとった日にゃあ、一族の恥さらしだってことで何言われるかわかったもんじゃない。ここのおおよそのレベルは、編入試験の時で把握しているが、それと定期考査とはまったくの別物だ。実際、いくつかの授業は、明らかにほかの高校における2年の単元以上のことを教えている。これはちょいと本腰入れないと、マズイかも知れない。
 では、誰に頼るのがいいか。優硫(まさる)は、こう言っちゃあなんだが、俺より明らかにレベルは下だ。これまでの様子から推測した限りだがな。もしかしたら、意外に、成績はいいのかも知れないが、現時点では未知数だ。珠璃は……。コイツはあとでどんな交換条件を提示してくるか、わからねえ。「赤点とった方がマシだったかも」なんて博打は、さすがに打つ気になれない。
 そんな風に考えていると、エントランスのところで、とある女生徒の姿が目にとまった。彼女はちょうど、帰るところらしい。
「そうだな、彼女に頼んでみるか」
 俺はやや早足になり、下駄箱で靴に履き替えるというステップをすっ飛ばして、エントランスへ向かった。
 その女生徒……鳳 美悠那に声をかけるために。


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