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作品名:「Saga T 神氣學園封神傳」 作者:ジン 竜珠

第31回 弐之傳 疾走する頭脳・拾弐
 俺と珠璃はある雑居ビルの屋上で合流した。そこに冨賀森さんの体があるからだ。俺は荒魂の気配を追いかけたんだが、
「ボクの方は、奇魂だったよ」
 と、珠璃が言った。髪の色が金色っぽく、右目が燐光を放っている。いわゆる「リミット解除」の状態だ。だが、まだこれでもこいつの「本気」じゃない。まあ、それはどうでもいいか。それよりも。
「なんで、こんなことになったんだろうな? なんか知ってるか、珠璃?」
「さあ? ボクが掴めたのは、学園が把握していることだけだから。……ある種の招魂をかけられたようでもないし。彼自身に『離魂病』の既往歴でもあれば別だけど」
「離魂病」とは、文字通り、無意識に魂なり幽体なりが本体から離れることをいう。医学でも同じような表現を使うことがあるが、あっちは「夢中遊行症」俗にいう「夢遊病」だから、目の前のケースとは関係ない。
「調べてみないとわからねえな、そりゃ」
 そして近づいた時だった。
 突然、倒れている冨賀森さんの前に、まるで俺たちの行く手を阻むように二つの影が現れた。一つは長身で鍛えられた体つきの男、もう一つは背は少し低いが均整のとれた体つきの女だった。二人ともそれが制服であるかのように、揃って黒い上下に、夜だというのにサングラスをかけている。男の方は髪は短め、女の方は、おそらくは長い髪を、後ろでお団子にまとめていた。
「ここからは我らの仕事だ。彼の身柄はこちらで預かる」
 男が低い声で言った。威圧的とまではいかないが、それなりにプレッシャーを感じる声だ。
「どういう意味だ?」
 負けじと、俺も問う。
 女の方が、芯の通ったような声で言った。
「彼は明らかに『普通』の状態にない。下手をすると、『こちら側』に戻ってこられない恐れもある。それとも。彼を正常に戻し、これまで通りの日常を送らせる、そんな芸当もできるのかな、宗家のお坊ちゃんは?」
 口元に浮かぶのは、嘲笑だ。
「竜輝、こいつら……!」
 珠璃が険を滲ませ、小声で俺の注意を促す。俺は片手で珠璃を制する。俺にはおおよその見当がついていた。珠璃は敵対的存在に感じたようだが、こいつらが、「冥神(みょうじん)」のメンバーだろう。なんというか、石動(いするぎ)さんや凉(りょう)さん、そして姉貴が「隠している」『氣』と同じものを感じる。
「ああ、確かにそこまでのことは、俺にはできねえかもな。だけど」
 と、俺は静かに念を凝らし、呪を唱える。刹那、俺たちの周囲に放電のような光が幾筋か走った。まるで俺たちを包む半球の上をなぞるように。
 男の方が、周囲を見回しながら緊張した声で言った。
「これは……!」
 女の方も、上空を見ながら、固い声で呟く。
「誰かに、『視られて』いた……?」
「今は『不可視の結界』を敷いてあるから大丈夫だけど。『まとわりついてくる』念ぐらいちゃんと感知しようぜ」
 と、俺も鼻で嗤うように言ってやった。
 まず先に反応したのは男の方だ。
「どうやら君の実力を見くびっていたようだ。失礼はお詫びする」
 そして頭を下げる。少し遅れて、女の方も慌てて頭を下げた。でも、どこか不承不承に見えた。男が頭を下げたので、仕方なく下げてやったっていうのが、見え見えだ。
 一応、誤解(?)も解けたのか、男の方がさっきよりも幾分穏やかな口調で言った。
「彼については、こちらで処置をします。そちらで入手した情報があれば、こちらにいただきたい」
 俺は例の結晶について話した。
「今、持ってないんで、碧海先生に預けたんでいいですか? 多分、情報はそのままコピーできているはずなんで」
「それでよろしいです」
 男が頷く。どうやら、今回の件はこれで解決のようだ。男が冨賀森さんを肩にかつぐと、二人はビルの屋上伝いに跳躍し、夜の闇に消えていった。
「竜輝、なんなんだい、今の連中?」
 まだ不機嫌そうな表情で珠璃が聞いてきた。
「さあな。例の、『学園を護ってる』ていうエキスパートの人たちだろ。お前も話してたじゃん」
「凉先生から、ちょっと聞いただけだからさ、詳しくは知らないんだよ、ボクも」
 そして、俺を見る。「知ってるなら教えろ」って、その目は言ってたが、俺は肩をすくめるだけだ。珠璃に知らせるべきかどうかわからないし、そもそも俺もよく知らないからな。


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