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作品名:「Saga T 神氣學園封神傳」 作者:ジン 竜珠

第3回 序之傳・参
 十年も経てばいろいろとかわるものだ。車一台がようやく通れるぐらいの山道を登りに登って、目指す家があったように思ったが、今その道は大型トラックでさえ楽勝で離合できそうな広い道に変わっている。左右は林だったと思ったが、片方はすっかり拓けて周囲の情景を一望できる。
 そして綺麗に造成されて、新興住宅地となっていた。
 その住宅地のどん詰まり、っていうほどでもないんだが、一番上に、その家はあった。昔ながらの日本家屋という風情は残しながら、ところどころ改装してある。正直、でかい。小さい頃に迷いそうだと思った記憶は、おぼろげにあったが、自分が小さい上、不案内なところにいるからゆえの誇張された感想だと思っていた。
 本当にでかい。俺が住んでた天宮宗家の家ほどじゃないが(あれは、バカみたいにでかいからな、敷地の中に森があるなんて、有り得ねえだろ)、その気になればバスケットのコートが二面ぐらいとれそうな庭とか、離れがあるとか。
 ちなみに離れは「道場」として改装してあるそうだ。ということはもともとは道場があったわけで(「天宮」の家だしな)、すると、もとはもっとでかかったんだな、この家。
「露南(つゆな)さんがいろいろと手を入れてくれたところも多いしね、周辺とか」
 露南さんていうのは、俺たちの「またいとこ」で、空き家状態のこの家の管理をしてくれてた人だ。正確には、管理してた人の娘さんだけど、実質的にこの数年、管理してたのは露南さんらしい。確か、三十代後半だったと思うんだけど、なんか世界に飛び出したりとかいろいろがんばっている、すんげえ人だ。
「さて、送られてきた荷物は一階の空き部屋に置いてあるから。あ、竜輝の部屋は二階の東側の部屋ね」
 そして意味ありげな笑みを浮かべて言った。
「あたしの部屋は一部屋挟んだ、南の部屋だから。いつでも夜這いしてこい。歓迎するわよ」
「誰がするかッ!」
 何言い出すんだ、このバカ姉貴は!? せっかく意識しないようにしてたのに、俺と姉貴が本当は血が繋がってないってこと。
 俺の表情の変化を楽しんだかのように、ひとしきり笑うと、姉貴は台所と思しき方向を見ながら言った。
「そろそろお昼だし、なんか作るね。あとで、市内を軽くドライブ。明日は学園の理事長さんにご挨拶に行かないといけないから、大雑把にでも道を覚えておくこと」
「そういえば、ここに上がる道の途中でバス停を見かけたけど、あそこで乗ったんでいいのかな?」
 俺の質問に、姉貴は少し考えて答えた。
「ここの裏手の道を五分ぐらい降りて、少し行った先に違うバス停があるの。それに乗って市電に乗り換えた方が、トータルの時間で早いと思うわ。まあ、あたしもよくはわからないから、その辺は自分で確かめなさい」
 ここはかなりの高台だ。チャリンコだと、行きはいいが、帰りはとんでもないことになりそうだからな。公共交通機関を利用するのが、得策だろう。
 俺は空き部屋に積まれた荷物を抱えて、二階の部屋へと向かった。
 俺の新しい生活が始まる。正直、爺さんにどんな目論みがあるのかわからない。聞いても教えてくれるような爺さんなんかじゃねえからな。ただ、「ご先祖の不始末」っていうのが、尋常なものじゃねえっていうのは、おぼろげにわかる。それをどうにかするのが俺に課せられたものなら、それを受け入れ、乗り越えるのが俺のするべきこと。
「苦難が来たら、むしろ喜んで立ち向かえ!」
 それが父さんの、そして俺の直接の師匠でもある宗師・天宮瑞海(ずいかい)、すなわち爺さんの教えであり、口癖だ。
 小さい頃から、それを聞かされてたせいか、すっかり刷り込まれちまってる。
 不謹慎だが、どんな出来事が俺を待ち受けているのか、それを思うと、自然と腹の底からワクワクしてくる自分がいるのだった。

 やがて、あんな大事件に関わることになるなどと、露ほども思いはせずに。


(序之傳・終)


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