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作品名:「Saga T 神氣學園封神傳」 作者:ジン 竜珠

第28回 弐之傳 疾走する頭脳・玖
「ち。消えたか」
 完全に再現したつもりだったが、消滅しちまった。なんかの手がかりかも知れねえのに。固定率が低かったか?
「竜輝、手」
 と、麻雅祢(まがね)が傍まで来た。
「え? ああ、そうか、お前の能力を使えば」
 俺は右の掌を上に向ける。麻雅祢がその上に自分の右手をかざした。
「うん、大丈夫」
 そう言って、麻雅祢はスカートのポケットから、ミント風味の清涼菓子が入っているようなタブレットケースを出した。スライドさせて口を開け、中に入っていた砂鉄のようなものを俺の右の掌、その中央に振りまく。そして再び俺の掌の上に自分の右手をかざし、小さく呪文を唱えた。
 静電気にも似た感覚と小さな放電のような光が何度か閃いたと思ったら、掌の粉が集まり、一瞬でさっきの結晶体を形成した。
 これが、麻雅祢の能力だ。こいつは目に見えぬ「情報体」を結晶化させることができる。この理論に基づけば、幽霊だって結晶化できることになるが、まだ成功していないらしい。というより、そもそも結晶化したら動けないので、霊の方が嫌がるようなのだ。目下、この術を利用した式神を開発中とのことなので、もし完成したら是非カ○セル怪獣のウィ○ダムを作ってもらおうか、とか思ったこともある。
「材質は鉄だけど、『情報』はコピーできてるはずだから、うまく読み出せば何でできてるかもわかるはず」
「そうだな。サンキュ」
 俺は笑顔で言ったが、変わらず麻雅祢は無表情のまま、コクンと頷くだけ。……やっぱ、苦手だわ、こいつ。
 麻雅祢が再現した結晶をティッシュに包み、ポケットにしまうと、俺はもう一度、周囲を窺う。
 やはり、これ以上「何か」を見つけるのは難しそうだった。

 午後六時。
 俺たちは喫茶店「カレイドスコープ」に来ていた。学園がある昴(すばる)の北部に位置する宝條(ほうじょう)四丁目ってところにある喫茶店で、ウチの学園だけじゃなく、近隣の中学高校の生徒も、学校帰りによく寄り道しているスポットなのだそうだ。
 確かに、普段はそうなのだろう。だが、今、カウンター席は無人、五つあるテーブルは俺たちがいる一つだけが埋まっている、要するに俺と、麻雅祢と、珠璃(じゅり)だけがいる状態なのだった。人に話を聞かれないために、珠璃あたりが人払いの結界を敷いたのだろうが。
 これって、営業妨害なんじゃね?
 そんなことを指摘すると、珠璃のやつ、笑顔であっさり言いやがった。
「ここのチョコラテを飲みたい気分だったんだ」
「あとで、フォローしとけよ」
「ああ。ここのマスターが過労で倒れるくらい、商売繁盛の祈願をしてあげるさ」
 笑顔で物騒なことを言っているが、冗談ではすまないかも知れない。こいつの実力から考えれば、本当にそうなりかねない。
「加減しろよ。ところで、蒼本(そうもと)先生はどうだ?」
「ボクが行った時には、意識を取り戻していらっしゃってね、短い時間だったけど、話を聞くことができたよ。化学部に冨賀森(とがもり)っていう三年生がいるんだけど、彼から渡されたものを口に含んだまでは覚えてらっしゃった。黒くて菱形をした板状のもので、百円玉ぐらいの大きさがあったそうだ。体温や唾液で溶けるらしく、舌の上にのせたら、ほどなくして溶けたらしい」
「それって、もしかして、これか?」
 俺はポケットから、ティッシュの包みを出した。中にくるんであったものを見せる。
「近くにいた半野良の犬から見つけた。実物は消えちまったんで、これは麻雅祢が砂鉄を使って再現したヤツだな。情報は、今夜、ほどいて読み出すつもりだ。ところで、その三年生なんだが?」
「成績は中の中。ごく平凡な生徒。でもね、ちょっと気になるところがある」
「なんだ、それ?」
「彼、去年の十二月期の『ビジネスアイディア・コンクール』に出品してるんだけど」
 と、珠璃は少し考える素振りを見せた。
「テーマはちょっと突飛だった。でも、こういう状況になってみれば、ミハシラの誰かが目をつけてたかも知れないね」
「どういう意味だ?」
「去年の十二月期は、優秀作だとか、そういう賞に該当するものはなかったんだ。でも、一月になってミハシラ・コーポの総務部から、十二月期出品者の情報についての閲覧申請が提出されたんだ」
 珠璃が説明してくれたところによると、出品者のデータは、優秀作品以外は学園に返されるという。
「言葉は選べよ。その言い方だと、ミハシラを疑ってるみたいだぜ」
「言ってはなんだけど、凡庸な学生に、そんなアヤシゲなアイテムが用意できると思うかい?」
「ネットかも知れないぜ?」
 どうも珠璃の中では「ミハシラ=怪しい企業」という図式ができあがっているらしかった。


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