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作品名:「Saga T 神氣學園封神傳」 作者:ジン 竜珠

第27回 弐之傳 疾走する頭脳・捌
「それじゃあ、ボクは病院へ行ってくるから、竜輝は麻雅祢(まがね)ちゃんと一緒にここの調査をお願いするよ」
 理事長室を出て、珠璃はそんなことを言った。
「……こいつと、コンビで、か?」
「なんなら、竜輝が病院の方に顔を出すかい?」
「いや、人間関係とか、わかんないことが多そうだから、やっぱここでいいや」
 クス、と笑って珠璃は俺の耳元で囁くように言った。
「麻雅祢ちゃん、かわいいからって、手ゴメにしちゃダメだよ? 彼女、結構、竜輝のこと気に入ってるから、キミが言えば最後まで許しちゃうだろうしね」
 咄嗟に地獄突きを放ったが、その時には珠璃の姿は数メートル離れていた。くっ、すばしこいヤツ。

 そんなわけで、まずは化学室だ。しかし、例によって痕跡らしいものが感じられない。いや、逆に怪しい気配だらけで特定できないともいえる。
「まいったなあ、麻雅祢、なんかわかるか?」
 俺の言葉に、麻雅祢はフルフルと首を横に振る。
「あたし、こういうの、苦手」
 ぼそっと、抑揚のない声でそんなことを言う。
「そうだったな。お前は『一方向の力』に特化したヤツだったっけ」
 それなら、と、俺は印を組み、静かに呪を唱える。ここに漂う余計な「波」を極力廃し、目的となる因子のみを選り分けるのだ。ただ、場所が場所だけに、成功率は低いだろう。
 手応えらしいモノが引っかからないことに落胆し、半ば予想通りだと思いながら、印を解くと、ふとあるものが目に入った。化学準備室の床に転がっているそれを手に取ると、それは、絵合わせパズルだった。九分割したブロックに八枚の絵のあるピースを動かして一枚の絵を作るタイプだ。だが。
「うわ。無茶苦茶だな、この『ならび』は。この状態から揃えるのって、かなり難しいんじゃね?」
 ちょっと触ってみたが、スライド部分が傷んでいるのか、容易には動かない。というより、ほとんど動かない。
「あ? なんだ、これ? ……壊れてるじゃん。動かねーって、こんなの」
 よく見ると、絵のあるプレートの「爪」が折れてて、二、三枚ほど絶対動かなくなってる。絵を完成させるどころの話じゃない、この状態から、変えられないんじゃねえか。
「犬」
 と、突然、ぼそっと麻雅祢が呟いた。
「は?」
「犬」
 と、もう一度、呟き、窓の外を指差す。そこには、窓枠に前肢をのせ、こちら側を伺っている一匹の柴犬がいた。
「どこから迷い込んだんだ、お前?」
 近づくと、犬は「ヘッヘッヘッヘッ」と、舌を出し、俺を見上げている。窓を開けると、鳴きながら尻尾を振った。
「首輪は……、ないな。でも、人なつこいから、完璧な野良じゃねえか。……ん? お前?」
 なんだか、違和感を感じる。凝視すると、俺の霊眼に映る一つの影。
「じっとしてろよ……」
 俺はそう言って、静かに右手に「氣」を集中させる。犬も何かを感じ取ったのか、おとなしくしていた。
 犬の頭の上に右手をかざす。そして、俺は呼吸(いき)を整え、静かに右手の指を犬の頭頂にスッと潜り込ませた。そのまま静かに指を沈める。第二関節まで潜り込んだところで「目当てのモノ」を見つけると、それをつまんで、俺は手を犬の頭から抜いた。
 一声「ワン」なんて鳴いてから、犬は窓枠から前肢を下ろし、駆けていった。
 言っておくが、実際に俺の手が犬の頭に潜ってたわけじゃない。その証拠に俺の指は血液だの髄液だのといった水分で濡れてはいない。今、俺がやったのは、犬の幽体に同調して、そこから……。なんていうのを学理として説明するのは難しい。だから、物理的な体に手を突っ込んだんじゃないってのを、理解してもらえばいい。
 俺の指にあるのは、菱形をした黒光りする板状のもの。大きさは百円玉ぐらいだろうか? 厚みは二、三ミリ程度。何だろうとじっくり見ようとした瞬間、それは砂でできた細工物ののように、風に吹かれて崩れ、消えていった。


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