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作品名:「Saga T 神氣學園封神傳」 作者:ジン 竜珠

第26回 弐之傳 疾走する頭脳・漆
 放課後。あちこちで清掃が始まった。何の当番にも当たってない俺は、とりあえず人気(ひとけ)がなくなるまで屋上で時間を潰していたんだが。
「ん? 救急車?」
 なんだか騒がしくなったかと思ったら、正門の方から救急車が入ってきたのだ。そして誰かを担ぎ出して出て行った。その時点では、それ以上のことではなく、掃除が終わったと思しき頃、俺は校舎に戻った。
 こんな風に人気が無くなるのを待っていた理由は一つ。六時限目に感じた、妙な「気の揺らぎ」の正体を突き止めるためだ。こういう探査は結構デリケートで、できるなら深夜が望ましい。しかし緊急性を持った事件かも知れず、一刻を争うかも知れない。だからなるべく人の数が減って、飛び交う「念」だの「生体エネルギー」だのといった「雑音」が少なくなるのを待ったのだ。
 もちろん放課後だからといって、無人になる訳じゃない。部活などでかなりの数の生徒が残っている。だが、それでも、探査がやりやすいことに違いはない。
 俺は実習棟の方へ向かった。すでに「アンテナ」は伸ばしてある。
「あいかわらず、探査しづれえな、ここは」
 妙に力場が調律されているせいで、ちょっとした程度の異状なら、その痕跡が探知できない。現に、さっき救急車が来た時、かなり混乱したはずだが、その痕跡すらない。
 それでも探査を続けていると、いきなり理事長室に呼び出された。正確には職員室に呼び出しをくらったんだが、そこから理事長室へと行くことになったわけだ。ワンクッション置いたのは、いきなり理事長室だと、何事かと思われるんで、そんなことがないようにとの配慮からだそうだ。……職員室に呼び出し、っていうのだけでも、十分「何事か?」のレベルなんだがな。
 そして理事長室には、理事長のほかに、あと二人の女子。二人は生徒会長の鬼城 珠璃(きじょう じゅり)、そしてもう一人の女子は橘 麻雅祢(たちばな まがね)だ。……例によって天宮の関係者だな。俺より一つ下だから、二年生か。しかしなあ、この麻雅祢っていうヤツ、セミロングの髪の艶もいいし、ちっさいし、いわゆるお人形さんみたいにかわいいんだが、感情表現に乏しい。本当に「人形」なんじゃないかって思ったこともある。今も俺の隣に立ってるんだが、無表情で、俺と目があってもニコリともしねえ。俺の苦手なタイプだ。
「急に呼び出したりしてすまない。実は急を要する事態が起こってしまったものでね。石動(いするぎ)くんは所用でここを離れているし、碧海(あおみ)先生も別の学務で隣の市に行ってもらっている。なので、君たちに頼るほかないのだ」
 理事長は、椅子に座り、なんだか偉そうに言っている。まあ、いいけどな。
「で、何があったんですか?」
 俺の問いに答えたのは珠璃だ。
「化学室で化学担当の蒼本(そうもと)先生が倒れてるのが発見されたんだ。でもね、いわゆる体調の異常ではないようなんだ」
「なんだ、それ?」
「何らかの『力』によって眠らされている、あるいはその『力』をうまく受け入れられなかったがために、意識を失っているという感じが、一番しっくりくるらしい。……いや、ボクが視たわけじゃないから、このぐらいしかわからない」
「ふうん」
 珠璃の話を要約すると、こういうことになる。放課後になり、化学室の清掃に当たっている生徒が化学室、正確には化学準備室へ繋がるドアのところで蒼本講師が倒れているのを発見。保健医を呼び、その判断で、救急車で病院へと搬送。しかし、その病院はミハシラ傘下の病院で、たまたま天宮の関係者がおり、一目で通常の事態でないことを見抜き連絡してきた。
「なんなんだ、その『力』って?」
「わからない。例によってここは……ね」
 珠璃が肩をすくめる。
「そういうわけだ。可能な範囲でいい。何があったのか、調べてくれたまえ」
「この三人で、ですか?」
 俺は、珠璃と俺自身と、麻雅祢を指差して言った。確か、生徒としてほかにも天宮の関係者がいたはずだ。鷹尋(たかひろ)だっている。
「えっとね」と、珠璃が説明してくれた。
「鷹ちゃんは、新人戦の予選で、今日は午後から、いないんだ」
 そういえば、鷹尋は陸上部で短距離やってるって言ってたな。
「あと、三Aと三Fにそれぞれいらっしゃるんだけど、今日は央城(おうじょう)市で県統模試があってね、希望者のみではあるんだけど、お二人ともそっちに行ってらっしゃる」
 県統模試……県内統一模試だ。前の学校でも、そんなのがあったな。
「ちなみに、三年生にいる天宮の関係者って?」
 俺の言葉に、珠璃が口元に笑みを浮かべる。
「三Aが天宮 杏(あまみや きょう)さん、三Fが響堂 零司(きょうどう れいじ)さん。どうだい、嬉しいだろ?」
 うわ。なんか、意図の読めねえ人選だな。杏さんは天宮の分家の娘さんだ。一、二度しか会ったことはないけど、なかなかユニークな人物だ。「微笑むナイフ」といえば、おおよその人物像がわかってもらえるだろうか。一方の零司さんは、俺が「兄貴」と慕う人物だ。詳細は省くけど、俺が目標とする人物でもある。
「そうか、零司さんがいるのか。鷹尋とともに俺の心のオアシスだな」
 聞こえないように呟いたつもりだったが、珠璃がなんか、小首を傾げている。……笑顔で。ちょっと、こわい。まあ、あとで、フォローを入れておこう。


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