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作品名:「Saga T 神氣學園封神傳」 作者:ジン 竜珠

第23回 弐之傳 疾走する頭脳・肆
 確かに天宮の「宗家」は、お弟子さんが多いし、人の出入りも多い。なんだかよくわからない、いわゆる「怪しい」人たちだって、夜中に何度か見かけたことだってある。しかし、まさかそんな秘密部隊みたいなのが組織されてるとは思わなかった。……でも、待てよ、「冥神(みょうじん)」って言葉、どこかで聞いたことがあるな。いや、石動さんが紙に書いた「冥神」ていう文字じゃなくて、「みょうじん」っていう音の方……。
「あ!」
 思わず俺は声を上げた。何事かと、三人が俺を見る。構わず、俺は言った。
「あの学園の敷地、北の方に旧校舎があって、確かその当時の名前が『名仁(みょうじん)学園』!」
「やっぱり鋭いな、君は。さすがは、胡桃の自慢の弟だ」
 と、凉さんがニヤニヤしながら言うと、姉貴も「フフフン」と胸を反らす。そう言えば、凉さんは父さんと兄妹弟子で、昔はよく姉貴と遊んでたような気がするな。
「これは、あたしや紗弥が思ってることなんだが、実際はもっと多くの者が思ってるんじゃないか、ていうことがある。実際の話、あの土地の所有者は宗師で、ミハシラ・コーポが借りてるわけだしな。そして、さっきの話にも関係する」
 と、凉さんが、俺たちしかいないにも拘わらず、声のトーンを落とした。
「あの土地にはおそらく『曰く因縁』がある。そして、それは多分、天宮にとって汚点ともいうべきものだ」
 凉さんが俺を見たが、俺はその目を真っ直ぐ見返した。確かに彼女の言うとおりだろうが、俺はその詳細を知らない。だから、恥ずかしく思うことなどない。
 俺のそんな心の動きを見透かしたわけじゃないだろうが、凉さんはニヤリとして話を続けた。
「天宮の秘密組織の名前が『冥神』だっていうのと、あの学園の昔の名前が『名仁』だっていうのとは、正直、どっちが先か、わからない。市史なんかを読むと、大正時代、あの辺りが、字は違うが『名陣(みょうじん)』と呼ばれていたのも確かだし。でも、まったく無関係とも思えない」
 その後を継ぐように石動さんが言った。同じように声をひそめて。
「おそらく、大正時代あるいはそれより前に、あの土地に絡んで何かがあった。そしてそれは天宮にとって都合の悪いこと。それを隠蔽するために、冥神を結成し、監視してきた」
 ……。なるほど、一応スジは通る。詳しい内容は聞かされていないが、あの土地には、「ご先祖がしでかした不始末」があるという。その不始末をどうにかするために、長年に渡ってあの土地を監視していたことは有り得る。しかし。
「なんで、俺にそういう話を聞かせるんですか?」
 俺は率直に聞いた。凉さんは石動さんと顔を見合わせ、姉貴は、我関せずといった感じで紅茶を飲んでいる。
 肩をすくめ、凉さんが応えた。
「簡単なことさ。何か事件が起きる気配がある。もしその根本なり、元凶なりがわかるんであれば、先に手を打つ。予防に優るものはないからね。だから、あんたが何か知ってたら、揺さぶりかけたら、何かわかるかな、って。そう思っただけさ」
 あけすけ、というか、少々ぶっちゃけ過ぎなような気もするが、凉さんはあっさりと質問に答えてくれた。こんなにさばさばしてると、いっそ気持ちがいい。
「それじゃあ、俺じゃ、お役に立てません」
 苦笑いを浮かべて俺が言うと、
「らしいね」
 と、凉さんも笑う。
「それじゃあ、本題ね」
 と、石動さんが俺を見る。
「さっきも話したように、あの土地で、もし前のような『力場の揺らぎ』が起きたら、外部でそれを利用する者がいるかも知れない。もしかすると、その『揺らぎ』の正体を掴んでいて、積極的に起こそうとする者さえ現れるかも知れない。そいつは学園の内部に潜り込んでくる恐れもある。そしてそれは物理的手段や存在であるとは、限らない」
「つまり、俺に冥神の手伝いをしろ、と?」
「ええ。もしかして、ご不満だったかしら、宗家の『御曹司』としては?」
 石動さんの挑戦的な笑みに、俺もニヤリとした笑いを口元に浮かべて、応える。
「まさか。むしろこちらからお願いしたいぐらいですよ!」
「おーおー、血の気が多いんだな、宗師の御令孫は」
 茶化すような口調で凉さんが言うと、姉貴が両手を「パンパン」と打ち合わせた。
「ハイハーイ! お話はこれでおしまいね! ささ、お茶会にしましょ!」
 そして笑顔を浮かべる。

 お茶会の途中、トイレに行った俺が用を済ませて出ると、傍の洗面台のところで、凉さんが待っていた。
「あ、すいません、今あきましたん……でッ!?」
 俺の言葉を遮り、凉さんが俺の首を脇に抱え込む。
「ちょ、ちょっと、何するんですか!?」
 俺が抗議すると、凉さんは俺の耳元に顔を近づけ、囁くように言った。
「どうだ、血の繋がらない『キレーな、おねいさん』と二人っきりの同居生活は、ンん!?」
 その口元には、イタズラっぽい(断っておくが好意的解釈による、婉曲的表現だからな!)笑みが浮かんでいる。
「な、何を言ってるんで……!」
「一回ぐらいは、部屋に忍んでいったんだろうなあ、ええ!?」
「行くわけないでしょ!!」
 と、俺は凉さんの腕をふりほどく。
「ウソつけ!」
 と、凉さんはかわらずニヤニヤ。
「ホントですよ!」
 俺は大まじめ。
「……ホントに?」
「ホントです!」
「……」
 俺の答えに、凉さんは真顔になり、そして頭をガシガシ掻いた。
「……つまんねー野郎だなあ。少しは青春的イベントを……」
 何か言いかける途中で、咳払いをすると、凉さんは俺の頭をワシワシとなで回す。
「ウム! 担任教師としては、たいへん喜ばしい限りである! これからも己の心の錬磨に努め、道を踏み外すことのないように精進したまえ!」
 そして、去って行った。
 ……トイレじゃなかったのか? 何しに来たんだ、あの人……?
 ふと見ると、廊下の曲がり角のところで、姉貴と凉さんが、なんか話していた。見た感じ、姉貴が凉さんをやり込めてる感じだ。「現役の教師なんだから」みたいな単語が聞こえた。


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