小説&まんが投稿
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:「Saga T 神氣學園封神傳」 作者:ジン 竜珠

第19回 壱之傳 白骨は美少女の夢を見る・拾陸
 世に生き霊というモノがあるが、アレはその一種だ。もっとも、正確には生き霊ではない。エネルギー物質が、何かの「念」を核にして、凝(こ)り固まってできたモノだ。これが決められた作法や儀式に則って作られたモノなら、式神となり人工精霊となる。
 もっとも、式神などはコントロール下にあるが、ただ念が凝り固まっただけのモノは制御下にない。しかも周囲の念や、漂うエクトプラズムといった生体物質のカスなんかを集めて実体化しようとする。あの女は、標本をベースにしてそういったエネルギーが集まったモノだった。普通なら、視(み)てわかりそうなものだが、触った瞬間に気づいたのは「そんなわけはない」という思い込みのゆえだろう。そういったモノはそんなに長く存在できないし、明確な意志(らしいもの)を持てないのが普通だからだ。
 ちなみにその手の人造霊は、ちょっと扱いが難しい。もとが「誰か生きている人」の念だけに、下手に打ち返したりすると、その人にダメージが行ってしまうことがあるのだ。だから、「浄化」という手段を使うのだが、これがまた難しい。根本を何とかしなければ、いくらでも「再生」する可能性があるしな。
 そういえば、俺が標本が移動したことに気づけなかった理由だが、わかってみれば、単純なミスだった。六時限目、LL教室で英単語の「教材」として使ったらしいのだ。そして「動かさないように」という「お達し」を忠実に守った結果、LL教室に標本が置き去りになった。つまり初めから標本はLL教室にあったわけで、あの女生徒は、突然、標本が動き出してパニックになっていた、ということなのだ。そもそも、英会話の授業で白骨の標本を使うとか、教師が指示を勘違いするような凡ミスをしてしまう辺りからしておかしいが、それもここの土地の持つ力のせいなのだろうか?

「漫研で確認してきたよ。『秘剣 麗皇(ひつるぎ れお)』は、三年前卒業した部員が描いていた漫画の主人公だ」
 火曜日の放課後、俺は珠璃と、実習棟と本校舎の間にある中庭のベンチで昨日の一件について確認をしていた。俺も珠璃も持参したペットボトルで自家製ドリンクを飲んでいる。各種漢方薬や、木の実をすり潰したものなんかを調合したいわゆる「仙薬」だ。俺たちは小さい頃から飲んでいるので、今はむしろ美味く感じるが、一般人には、かなりキツイ飲み物だろうな。
 女の名前やプロフィールから、文芸部だとか漫画研究部だとか、そういった類の部活に関係あるんじゃないかってことになったんだが、ビンゴだったようだ。
「その漫画の主人公がなんで、あんなことになってんだ?」
「ここが、特別な土地だから、としか、今はわからない。ただ、要因のいくつかは推測できる」
 と、珠璃はバッグから数冊の本を出した。オフセット印刷のようだ。
「漫研が出している会誌の、例の漫画が掲載されてる分だ。これによると、あの麗皇とやらが活躍する漫画は、原作者が入学してから連載開始になった作品らしい。で、その会誌の発行が、毎月第一月曜日。本当なら、卒業と同時に完結するはずだったらしいが、叶わなかった……」
「……そうか」
 俺は思わず、目を伏せた。その原作者に、どんな悲劇があったのだろう。その無念が、あんな事件を引き起こしてしまったのだろうか?
「いやいやいやいや」
 と、珠璃がしんみりとした俺の目の前で思い切り手を振る。
「ペース配分がまずかったらしいんだ。ほら、ここ」
 と、三年前の二月に発行された機関誌を見せる。そこには例の漫画があり、その後書きにこんなことが書かれていた。
「いやあ、終わらなかったですねえ。ペースを間違えちゃいました。第二部が長すぎたかにゃあ? 仕方ないので、大学に行ってから、この続き、描きます。……って、こんな中途半端な終わり方、本当に念が残っちゃうかも!!!??? 在校生の皆さん、もし光の剣を振り回して、魔物を斬って回る、巨乳で関西弁喋る女の子が現れたら、そいつは『秘剣 麗皇』っていう、天界の戦士の仮の姿です。それか、僕の『残念』、文字通り、残留した念です……。仲良くしてやってくれると、とってもとっても嬉しいなあ……」
 そうか、こいつが元凶か。
「俺、こんなことのために転校してきたんじゃないはずなんだけどなあ」
「……去年一年間の、ボクの苦労、少しでも理解してくれるかい?」
 俺と珠璃は顔を見合わせて、深ぁい溜息をつくのだった。



(壱之傳 白骨は美少女の夢を見る・END)


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 小説&まんが投稿屋 トップページ
アクセス: 257