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作品名:「Saga T 神氣學園封神傳」 作者:ジン 竜珠

第18回 壱之傳 白骨は美少女の夢を見る・拾伍
 珠璃の言葉が、脳に静かに染み入ってくる。そしてある瞬間、答えとなって、俺の口を突いて出た。
「まさか、自分の体を作る『血肉』が欲しいってか!?」
 思わず標本を見る。白骨標本はまるで、そうだといわんばかりに、自分の体をなぞっていく。まるで、自分のボディーラインをイメージするように。
「じゃ、なにか? アレは九十九神(つくもがみ)の類(たぐい)か何かで、ちゃんとした体が欲しいって言ってんのか? でも、気配は九十九神のものとは違うし、そもそもそんなに年数経ったようなモノじゃねえだろ、あの標本!?」
「三年前に購入したばかりだね、備品台帳によると」
 なんで、一介の学生が学園の備品台帳の内容を把握してるんだ、て疑問は浮かんだが、即座に却下。珠璃は困ったような笑みを浮かべて溜息をつく。
「ボクにだってわからないさ。何せ、こうして実際に見るのは初めてだからね。でも、さっきからのやりとりとか、これまでの情報を整理すれば、そういう結論にならざるを得ない」
 白骨標本は、しきりに頷いている。珠璃はつかつかと標本に歩み寄ると、べたべたと触り始めた。
「この骨盤の形は男性だけど、霊的な張り具合からすると、女の子かなあ」
 なんて言いながら。
 なんだか、妙なことになっちまったなあ。このまま突っ立っていても手持ち無沙汰なので、俺も白骨標本を触ってみる。
「……あれ?」
 直接触っていて気がついた。思わず顔を上げると、珠璃と目が合った。どうやら、こいつも気づいたらしい。
 俺はいったん標本から離れる。珠璃も離れたのを確認してから、別の印を組む。そして静かに「咒(しゅ)」を唱えた。
「あはれ、あなおもしろ、あなたのし、あなさやけ、おけ。許し給え、活かし給え」
 直後、標本の輪郭が歪む。すかさず珠璃も「咒」を唱えながら、作法に則って、空中に何本かの線を切る仕種をする。
「天・元・霊・宝・神・剣・妙・通・力・勝!」
 歪んでいた輪郭が、空気中に霞んで消えたと思った刹那、そこに淡い光とともに一つの姿が現れた。
 なんていうのか、アニメにでも出てきそうな美少女だ。髪は紫色のロングヘアーで、胸が大きすぎる感はあるが、ナイスバディだ。着ているのはここの制服だが、もちろんここの生徒じゃない。
「いやあ、やっと『形』になれたわ、おおきに!」
 そして敬礼の仕種をする。
「もー、ほんま、堪忍してや! もどかしいゆーたら、なかったで! ウチが、いっしょけんめーに話してんのに、みんな逃げるんやモンな。なんか変や、思うたら、ウチ、骨だけしかないやん! そら、逃げるわな!!」
 と、やたら喋りまくり、大口を開けて「ガッハッハッハ」なんて笑う美少女(?)。……すでに俺の中で、彼女に対して「美少女」かどうか疑問符がついてるんだが、今は、どうでもいい。
「率直に聞くぞ? お前、何者だ?」
 少女の言葉を遮り、俺は聞いた。
「ん? ウチ? よくぞ聞いてくれました! ウチの名前は、『秘剣 麗皇(ひつるぎ れお)』! 聖剣の賢者・アズフィエルの、地上界における仮の姿や!」
 女の子は胸を張って答える。
「……後は任せたぜ、生徒会長」
 俺は、珠璃の肩を叩いて去ろうとした。
「ちょ、ちょっと待った!」
 珠璃が、俺を逃がさないよう腕を掴む。
「いててて! 決まってる、関節キマってるから!」
 謝りながら、珠璃は腕を放した。引き留めるのに、関節技をかけてくるあたり、イヤなんだろうなあ、珠璃も。ちなみに俺もイヤだ、こういう「イッちゃってる」系の霊、しかも「人造的なヤツ」を相手にするのは。
 なので、俺たちがとるべき行動は決まった。
「調理室でパウンドケーキ作ってるらしいぜ」
「今日は月曜だから、もしかしてスイーツ研かい? あそこはいろいろ食べ歩いているだけあって、舌は肥えてる。だから、彼女たちが作るお菓子にも期待が持てるんだ。妥協はしないからね、彼女たち。特に美悠ちゃんは腕前もプロ並みだし。一日も早くハーレムを作って、彼女を迎え入れないと」
「……お前ってヤツは……」
 そんな風に軽口を叩きながら、そして気を失っている女生徒を担いで、俺たちはLL教室をあとにした。扉を閉めると同時に、再び結界が発動する。時間はもってあと三十分ぐらいだろうか。だが、そのぐらいあったら、あの女も、もとの白骨標本と雑多なエクトプラズムの集合と、「誰か」の発した観念物質とに戻ってるだろう。


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