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作品名:「Saga T 神氣學園封神傳」 作者:ジン 竜珠

第14回 壱之傳 白骨は美少女の夢を見る・拾壱
 さまよえる白骨標本。
 放課後、生物室にある白骨の標本が歩き回る。そして遅くまで残っている生徒を捕まえ、空き教室に引きずり込み……。
「マジか、これ?」
 レポートの内容を読んでいる最中、俺は顔を上げ、珠璃を見た。「まずは、これを一番に読んで欲しい」といわれたのが、この白骨標本の話だが。なんだか変なのだ。
「教室に引きずり込み、黒板に板書した。『血肉が欲しい』……。怖いか、これ?」
 考えてみて欲しい。歩き回る白骨標本。それは確かに怖い。そいつに捕まり、空き教室に引きずり込まれる。これはもう恐怖の極致と言っても過言じゃない。だが、「オチ」がいただけない。
「黒板に板書してる間に逃げられるだろ? 百歩譲って腰が抜けてたとしよう。板書して、どうなるんだ?」
 確か、理事長は「七不思議のレベルで、実害はない」と言っていた。しかし、なんていうか、俺が想像していたのと違うっていうか、七不思議ってこういうもんじゃねえよな、とか、変にリアルっていうか。
「板書した後、標本は相手をじっと見た後、肩を落としてそのまま去って行くそうだ」
「むしろ悲哀すら感じる話じゃねえか、それ」
「目撃者や体験者の話をまとめると、こうなるんだよ。いわゆる最大公約数、共通項と思ってくれ」
「ていうことは、バリエーションがあるんだな?」
 俺は、ちょっと興味が沸いた風を見せた。しかし。
「たいして変わらないよ」
 と、生徒会室の隅にある冷蔵庫から出した果汁百パーセントのグレープジュースを飲みながら、珠璃は答える。
「板書した後、何かを喋るようにカタカタと下顎を動かした、『血肉が欲しい』の後に人の顔らしき絵を描いた、自分の体のラインをなぞるように、手を動かした。で、いずれも自分のメッセージが伝わらないと見るや、寂しそうに去って行く」
「ちょっと『裏』を読みたくなるような話だな。調べてたら、出てきたりしねえだろうな、殺人事件とか?」
 殺されて学園の敷地に埋められてる、「誰か」の怨念が標本に取り憑いてた、なんて結末でも迎えた日にゃ、俺は、俺をここに送り込んで自分はうちで、のうのうと胡座(あぐら)かいてるだろう天宮 瑞海(あまみや ずいかい)とかいうクソジジイを、ぶん殴ってやらないと気がすまない。
「俺に読ませたってことは、これ、お前が調べた事件だよな?」
 珠璃が頷く。
「これを一番に読んでもらったのはね、今日が『その日』の最有力候補だからなんだ」
「今日が?」
「毎月、第一月曜日に集中してるんだよ、目撃例が」
「つまり、今日、一つ目の怪異を潰せ、と?」
「本当に察しがよくて助かるよ」
 察しとか何とかいう以前の問題だと思うが、七十七もあるんじゃ早いとこ、とりかかるに越したことはない。……いや、実際はもっと少ないだろう。リストのいくつかは、明らかに重複してるし、単なる勘違いとかの可能性もあるわけだからな。
「しかし、目撃例が偏ってるっていうのは、ますます裏に何かありそうだな。殺人事件はないとしても、呪術的な何かとか」
「一応、そのあたりも視野に入れてはいるんだけど」
「引っかからないってことだな?」
「うん。キミも感じ取っていると思うけど、ここはなんだか『氣』が濃密なんだ。それがさっき言った調律と関係あるのかは断言できないけど……。そのせいかどうかもわからないけど」
「……海の中で、真水を捜すようなもんってことか」
 珠璃の言いたいことは、理解できる。確かにここは力場がおかしい。だから、誰かが呪術を行っても、容易には探知できない。裏返せば、自然に呪力が働いている状態ともいえる。
「まあ、何にせよ、運がよければ、今日の放課後に拝めるんだろ、『さまよう白骨標本』に。その時、何か掴めるんじゃないか?」
 俺は最後の菓子パン・ピーナツクリームサンドを平らげた。
 ちょうどその時、五時限目終了のチャイムが鳴った。


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