小説&まんが投稿
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:神氣學園滅神傳Reboot 作者:ジン 竜珠

第9回 壱之傳 帰郷雑記・参
 勝負の時間は実は、数分程度だった。
「いやあ、油断しましたよ」
 と、和寿さんは腰をさすりながら言う。
「腕を上げられましたな、坊ちゃん」
 平田さんが破顔する。
「和寿さんも、前より気配の断ち方が巧妙になってましたよ。千京市での実戦経験がなければ、負けたのは俺の方でした」
 これはお世辞でも何でもない。場数はそんなにあったわけじゃないが、やはり直(じか)に命をやりとりするような状況に追いやられたからこそ、相手の気配に敏感になれたのだと思う。もしそれがなかったら、最初の穏形の時点で、俺は和寿さんを見失い、キツイ一発を食らっていただろう。
「皆さん、お食事の用意ができましたよ」
 頃合いを見計らったかのように、お手伝いさんの頼恵(よりえ)さんが来た。頼恵さんは、どこか「お弁当屋さんのおばさん」っていうイメージの人だ。
 ちなみに、食事の用意はお手伝いさんの頼恵さんや美加穂(みかほ)さんのほか、あと、住み込みのお弟子さんたちでの当番制で作ってくれている。 
 俺たちは汗をぬぐい、食堂へと向かった。

 俺たちの食事は、粗食といってもよい。ついでにいうと精進料理だ。
 これは神仙道を奉ずる者として当然のことだろう。例えば、市井の神職さんだって大切な儀式前の数日は、精進潔斎を行う。そうしなければ、神はお応えにならないからだ。
 つまり、神との感合(かんごう)状態になるためには精進潔斎が不可欠であり、常日頃からその状態になるためには、当然のことながら日々が精進潔斎でなければならない。特に俺のように、いつ、どんな敵に出会うかわからない状況にあるものは、より一層の神の加護が必要であり、そんなわけで、俺は「ハンバーガー」だとか「牛丼」だとかいったものは、生まれてこの方、食べたことはない。
 一時期は食べてみたいと思ったが、今は食べたいとは思えない。なんて言うか、体の方が拒否する感じなのだ。
 俺たちが集まった食堂も、八十畳ほどの板張りの部屋だ。そこに正座で座り、配膳された食事を黙々と食べるのだ。食堂というより道場の趣がある。今ここで住み込みをしているお弟子さんは、パッとみたところ五十人くらいか。日本各地から集まってきてるからな、中には「別津五大高弟」と呼ばれる特別な家柄の子女も混ざっているらしいが、この場では誰が誰かわからない。
 こんな大勢が道場みたいなところで、黙って箸を進める様は、慣れないものからすれば異様以外の何物でもないな。だが、これもまた「修行」なのだそうだ。

 食事を終えると、俺は珠璃に声をかけられた。
「竜輝、裏の森で、ちょっと気になるものを見つけたんだけど」
「気になるもの?」
「うん」
 と頷いてから、珠璃は声をひそめた。
「多分、宗師もお気づきではないと思うんだ」
 爺さ、もとい、宗師でさえ気付かない「気になるもの」っていうのは穏やかじゃない。
「とりあえず、ボクたちで確認しておこうと思うんだけど」
「そうだな。で、何なんだ、『気になるもの』って?」
「法陣の一部、っていう感じのものなんだ」
「法陣? ますます穏やかじゃねえな」
 俺は珠璃に連れられるまま、裏の森へと向かった。


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 小説&まんが投稿屋 トップページ
アクセス: 27