小説&まんが投稿
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:神氣學園滅神傳Reboot 作者:ジン 竜珠

第3回 序之傳 黄泉津御柱・弐
 場所は定かでない。ただ、数十畳はありそうな大広間に、五人の男たちがいる。
 彼らはまるで円陣を組むように座しているが、それぞれを繋ぐように金色の筋が引かれた布を広げ、その上に座っているのだ。それは上から見れば五芒星、または「晴明判」とも「桔梗紋」とも呼ばれる図形であった。
 時刻も定かではないものの、屋外から自然な光が射し込んでいるところから見て、午前中か正午まもなくと思われた。
「剣の復元はどうなっている、栂(つが)殿?」
 この場の最年長らしき白髪の老人から「栂」と呼ばれた男は頷き、答える。
「四本は既に鋳造に入っております。ですが、やはり残る一本が……」
「うむ、ご先祖が敷いた『冥陣(みょうじん)』を抜ける際に、微塵に砕け散った、あの一本か。ならば、その四本と、『冥陣を抜ける際に砕けた』というところから、いかなる咒字(じゅじ)が刻んであったか、類推するほかあるまい」
 栂と呼ばれた五十代後半と思しき痩身の男が再び頷いた。
「砂堂(さどう)の娘は、どうであるか、桃源(とうげん)殿?」
 桃源と呼ばれた男は、五十に届くか否か、といった様子の、柔らかな印象の優男だ。
「あれでは、とうてい社会復帰は、できますまい」
「うむ。やはり、正しかったか。砂堂に『それとなく漏らした』甲斐があった。あの黄泉津御柱には、間違いなく大いなる女神・伊弉冉尊(イザナミノミコト)が、おわしますのだ!」
 白髪の老人の言葉に、四人が頷く。
「我が世界は、伊弉冉尊が神去られて(かむさられて)のちは、伊弉諾尊(イザナギノミコト)御一柱(おんひとはしら)で国生み神生みを為された。それが故、不完全なのだ。今こそ、伊弉冉尊にお出ましいただいて、今ひとたび、夫婦神(めおとがみ)として男息女息(おいきめいき)合わせ、国生み神生みをしていただかねばならぬ。さもなくば、世界は滅びへと向かうであろう」
 桃源が言った。
「で、砂堂の娘はいかがいたしましょうや?」
「捨て置け。たかが霊格の低い小娘如きが、片鱗とはいえ大神の分魂(わけみたま)をその身に宿せるなどと思い上がった、神罰よ」
 と、老人は鼻で嗤う。
 そして老人は、禿頭の男に目をやる。
「千代澤(ちよざわ)殿、『黄泉津御柱祝詞(よもつみはしらのりと)』の復元は、いかがであるか?」
 千代澤と呼ばれた男は、老人の次ぐらいに長上であるようだ。年齢は六十代といったところであろうか。狐目という喩えのできそうな、油断のならぬ目つきで千代澤は答える。
「やはり肝心の部分、『御柱を解き給ふ祝詞事(のりとごと)』については、なかなか『視えて』は、きませぬ。また、どの資料にも残されてはおらず、やはり、宗家の一子相伝か、と」
「そうか」
 と、老人は呻く。
「肝心の部分がわからぬ事には、先へ進めぬ。やはりこれまで通り、外堀を埋めていくよりあるまい。宮代(みやしろ)殿」
 宮代と呼ばれた男は黙って頭を下げる。
「在野(ざいや)の術師どもの間には、それとなくあの土地の『氣』が普通ではないことを流布させ、天宮流の高弟の中でも、これは、と思う者には『金丹醸成炉』のことを『漏らす』手筈を整えております」
 との宮代の言葉に、白髪の老人……磐坂(いわさか)は頷いた。
「いささか不本意ではあるが、禍津霊を賦活(ふかつ)して御柱に何らかの刺激を与えるという、これまで通りの方策をとるより他あるまい、当面は、な」
 そして磐坂は腕を組む。
「しかし、わからぬのは宗師の真意よ。諾冉(ナギナミ)二神のことと黄泉津御柱のことは、我らの誰よりも知悉(ちしつ)しておるであろうに、何故、この不完全な世界に固執するのか……」
 その問いに答えられる者は、この場にはいないようであった。
「して、磐坂殿の方は、いかがでございましょうや?」
 その問いを発したのは千代澤である。磐坂は「うむ」と唸って答えた。
「日々、結界の法則式が変わるらしい。なかなか『中』へは入れぬ。『アレ』をどうにかできれば、また、様子はかわるのであろうが」
 磐坂は、そう言って唸るのみであった。


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 小説&まんが投稿屋 トップページ
アクセス: 31