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作品名:神氣學園滅神傳Reboot 作者:ジン 竜珠

第2回 序之傳 黄泉津御柱・壱
「うぬっ、なんたる不覚ッ!」
 白髪を背中の中程まで垂らし、立派な鼻髭と顎髭をたくわえた老人が膝をつく。
「宗師、やむを得ません、『柱』を閉めましょう!」
 青年の言葉に老人は困惑しきった表情をする。
「しかし、玄馬(げんま)、それでは禍津霊(まがつひ)を封じきれぬ!」
「ですが!」
 と、別の青年が言った。
「今ひとたび『柱』を解いてしまえば、我が国は混沌と化すは必定! このまま『柱』として封じるほかないと、僕は愚考致します!」
「竹蔵(たけぞう)……」
 宗師と呼ばれた老人は、青年を見る。玄馬、竹蔵の他に青年が三人。いずれも力強く頷いた。それを確認し、宗師と呼ばれた老人……天宮 純凱(あまみや じゅんがい)は上を見上げる。天上と地上を繋ぐかのように屹立(きつりつ)する金色(こんじき)の巨大な柱。そしてその周囲を巡る、黒い霧状のモノ。周囲は閉鎖された空間、つまりは地下であった。
「……わかった。お主たちに、続きを任せよう」
 決意したように言った純凱に、五人の青年は頷いた。そして柱に向かい、皆それぞれが違う印契(いんげい)を組み、祝詞を唱え始めた。
「天(あめ)の八重雲(やえぐも)の上に黄金(こがね)なす御柱(みはしら)突き立てり、大地(おおつち)の下津磐根(したついわね)より出でて八百万(やおよろず)の神、言祝ぎ(ことほぎ)たまえり。男火水(おがみ)女火水(めがみ)の産霊(むすひ)凝(こ)りて御柱と為す。かく凝りて……」
 それに呼応するように、柱の周囲五方に突き立てられた、剣(つるぎ)が光り輝き始める。刃には何らかの文字がいくつか刻み込まれており、その文字が光を放っているのだ。そして文字から放たれた光は一本の太い光条となり、光の筋で刃と刃とを繋ぐ。その形は、上から見れば五芒星、または「晴明判」とも「桔梗紋」とも呼ばれる図形であった。
 祝詞が続く中、純凱は柱を見上げ、呟いた。
「……服するだけで人の身を脱し、仙となる金丹。だが、それはつまり、一度は人として死ぬること。より完全な金丹を作らんと欲せば、死を呼び寄せる事にも通ずる。浅はかな考えであった。儂(わし)の浅慮(せんりょ)のために、『死』そのものを呼び寄せてしまった。畏(おそ)るべき死の女神、黄泉津大神(よもつおおかみ)を……」
 祝詞が終わると同時に、地鳴りが轟き、周囲の壁が崩れ始めた。
「宗師、ここは長く保(も)ちません、早く出ましょう!!」
 そう言ったのは、この場の最年少、又吉郎(またよしろう)であった。頷くと、純凱は一同にこの場を出るよう指示を出す。
 地下の空洞に立つ光り輝く柱。しかしそれは見た目に反し、後に純凱によって「黄泉津御柱(よもつみはしら)」と名付けられる暗黒の象徴であった。そしてその周囲を巡るは、御柱に封じきれなかった禍津霊。御柱の完成を急いだあまり、取りこぼしてしまった「死のカケラ」であった。それだけではない。人々の邪念・妄執も吸い寄せられている。それらは禍津霊と合わさり、「魔怪」へと「堕ちて」いく。その連鎖は、まるで止まるところを知らなかった。

 時に慶応四年六月。物質的には元号が「明治」と改まる、まさに直前のことである。


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