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作品名:仙珠伝奇 作者:ジン 竜珠

第83回 第六章・九
 地上に降りた竜聖は、まず悠姫の元へと駆け寄った。そして彼女にエネルギーを送り込む。見る間に悠姫の傷が回復していく。
「竜聖」
 何か言いかけた悠姫を制し、竜聖は言った。
「立てるか? さあ、剣を持って」
 竜聖が何を言わんとしているか、それを察したのだろう、悠姫は頷くと、紫火七星を構えた。
 物音に目を向けると、人の形に戻った千岳大帝がよろめきながら、林から現れるところだった。
 悠姫が呪文の詠唱を始める。それは「滅尽七星真図」のものだった。
 その横で、竜聖は千岳大帝に言った。
「千岳大帝、お前は力を求めるあまり、力に振り回され、呑まれている。お前が力を使っているんじゃない、力がお前を出口にしているだけなんだ」
 この言葉は、しかし千岳大帝は聞いていないようだ。否、聞いてはいるのかもしれないが、理解出来ないのかも知れない。
 千岳大帝はちぎれた左腕の辺りを押さえ、何事か呟いた。それは何かの仙術だったのだろう。だが、不発に終わってしまったようだ。
 左腕の辺りを見てそれに気づくと、再び彼の体が変貌し始めた。顔つきは竜のそれに、体つきは鬼のそれに。
 悠姫の呪文詠唱はまだ続いている。それを見た竜聖は悠姫の前で盾になるように立ちはだかった。
 何らかのエネルギーの流れを感じてふと視線を動かすと、林の中で片膝をついている兵摩の懐から、ビー玉のようなものが光を放ちながら宙に躍り出るところが見えた。
 その時、千岳大帝が吠えながら、右手を突き出した。不可視のエネルギーが迫る。だが、それはさっきまでに比べると弱々しいものであった。
 竜聖は左手を前に伸ばした。ただそれだけでそのエネルギーは中和されたように消滅する。
「かくなる上は!」
 突如、千岳大帝の体から巨大な「力」が膨れあがる気配がした。
 最後まで温存していた切り札的なエネルギーなのだろう、再び千岳大帝の体から闘気が噴き上がる。
「悠姫、行くぞ」
 そう言うと、竜聖は悠姫の返事を待たず、彼女を背中から抱えて飛翔した。だが、悠姫も竜聖の行動を察していたのか、されるがままに飛び上がる。
 竜聖に抱きかかえられたまま、悠姫は呪文の詠唱を終えた。剣を天にかざす。すると、林のあちこちから光が現れた。
 全部で七つ。赤、橙、黄、緑、青、藍、紫。虹の七色だった。やがてその光点が円で結ばれ対角線で接合された。そこに現れたのは七芒星。
 さらにその中にさまざまな文字や記号が浮かぶ。
 そこから七色の光が天に昇り、弧を描いて滝のように千岳大帝に降り注いだ。
 身を震わせ真図を打ち破ろうとする千岳大帝を見ながら、竜聖は紫火七星の刃に手を添え、力を送った。鈍い銀色だった刃は眩いばかりの銀光を放ち、打たれた七つの金の点からは、金色(こんじき)の光が迸った。
 真図は一段と光を増し、千岳大帝を光の獄(ごく)に閉じこめる。
 その時、竜聖は悠姫の手が震えているのに気づいた。その顔をのぞき込むと、悠姫も竜聖を見る。
 彼女の瞳から涙が流れていた。
 胸が切なさと悲しさで一杯になった竜聖は、思わず、紫火七星を持った悠姫の右手を、右手で握りしめた。
 悠姫が決意を瞳に浮かべて頷く。
 竜聖は顔を千岳大帝に向けて、誰に聞かせるでもなく、しかし力強く言った。
「人の心が持つ真の強さ、それを信じられなかったことこそが、お前の弱さだ、千岳大帝!」
 そして二人で紫火七星を握りしめ、千岳大帝に向かう。千岳大帝も迎え撃つかのように右手を伸ばした。そして、轟音が轟いた。


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