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作品名:仙珠伝奇 作者:ジン 竜珠

第77回 第六章・三
 さすがに全裸では戦いにくいということもあって、竜聖は兵摩が仙術で出した服を素早く着た。本来なら人間の方が服に「着られる」仙術もあるが、竜聖には通用しなかったので、やむを得ない処置だ。だが、その間、悠姫の善戦で、充分時間を稼ぐことが出来た。
 そうしながら、竜聖は考えをまとめた。
 どうやら、仙術は本当に効かないらしい。さっきの炎も仙術の影響を受ける部分のみが燃える、呪術的な炎だったから無傷ですんだのだろう。だが、本物の火だったらひとたまりもないかも知れない。例えば呪的炎が延焼して辺りの木々が本当に燃えたら、そしてその火にさらされたら、かすり傷ではすまないだろう。
 竜聖は、このアドバンテージを最大限に利用しなければならないのだ。
「斬!」
 竜聖の声で蒜頭骨朶の先端は刃へと変じた。今の炎によるダメージがあるようだが、まだこの武器に壊れてもらうわけにはいかない。
 一気に地を蹴り、跳躍すると竜聖は空中で身をひねって、急降下するような体勢で千岳大帝に刃を振り下ろした。
 それを、手にした剣……紫火七星で受け止めた千岳大帝だが、次の瞬間には悠姫の扇から放たれた術によっていきなり腰の辺りまで地面に埋まってしまった。
 ここぞとばかりに刃を槍に変え突き込む竜聖だったが、千岳大帝に一気に押し返されてしまった。
「小癪なああッ!」
 怒号を上げると、千岳大帝は一気に空中へ舞い上がった。そしてその位置から兵摩目がけていくつもの光の弾丸を放つ。だが、それはことごとく悠姫に弾かれた。
 竜聖は思わず悠姫の芸術的なまでの動きに見とれてしまったが、自分の役目を思い出し、跳躍した。生憎、千岳大帝のところまで届かなかったが、その場で竜聖は呪を唱えた。
「射(しゃ)!」
 槍のようだった先端が、まるで銃口のように変化した。
 落下しながら先端を千岳大帝に向け、竜聖は次なる呪を叫んだ。
「弾(だん)!」
 すると、銃口のようだった先端から、妙に小気味のいい音とともに光の弾丸が撃ち出された。その弾丸はそれることなく千岳大帝の技の右の脇腹に命中した。
 まったくダメージになっていないようだが、気に障ったのだろう。鬼のような形相をして竜聖の方を向くと、千岳大帝は兵摩に向けて放っていた光の弾丸を竜聖に向けて撃ってきた。
 着地して思わず左掌をかざした竜聖は、出した瞬間、後悔したがそのまま光の弾丸を受け止めた。
 電子的な音を立てて弾丸が火花を散らし、消滅する。竜聖は無傷だった。
 その光景に千岳大帝は何を思ったのか。攻撃対象を悠姫と兵摩に絞るかの如く、動き始めたのだ。
 これを好都合と判断した竜聖は、千岳大帝に次々と攻撃を仕掛ける。だが、そのすべてが通用しない。軽くいなされるか、かわされるか。攻撃が当たっても、何らダメージを与えられない。
 多少はうざったく思っているようだが、千岳大帝も竜聖のことは無視することにしたようだ。それでも時折、パンチや蹴りが放たれてくるが、体霊を自在にコントロール出来るおかげで、竜聖もその攻撃のことごとくをかわしている。だが結局のところ、当初の作戦通り、竜聖が攪乱出来ているとはとうてい思えない。
 自分にも聞こえるぐらい、大きな音で何度も舌打ちをすると、竜聖は全身のバネをきかせて千岳大帝に体当たりをした。そんな原始的な攻撃をしてくるとは予測していなかったのか、一瞬、千岳大帝が体勢を崩したまさにその瞬間!
「もらった!」
 そう叫ぶと同時に悠姫が畳んだ扇で千岳大帝の右肩を叩いた。その時、いかなることが起きたのか。稲妻にも似た筋状の紫光が千岳大帝の右腕を包んだ。明らかに狼狽している表情を浮かべ、千岳大帝が紫火七星を握った己の右腕を見た。
 仙術が効いたのか、彼の腕は硬直している。どうやら意のままに出来ないようだ。
 その隙を逃さず、悠姫の左のハイキックが千岳大帝の右手首を蹴り上げる。爆音にも似た音を立て、手首から火花が散った。そして紫火七星が天高く舞う。
 すかさず悠姫は扇を投げ上げた。扇は宙で展開し雷(いかづち)の雨を降らせる。それに呼応するかのように千岳大帝の右腕の放電も強くなった。だが、その術はそれまでだったようだ。
 千岳大帝が気合いをかけるや否や、腕の放電は指先に収束した。そしてそれを宙の扇に向けると、一気に放出した。高エネルギーを受け、扇は跡形もなく砕け散る。
 だが、その隙に悠姫は紫火七星を手にしていた。
 宝剣を取り返した悠姫は、しかし激しく消耗していた。剣を構えるものの、肩で息をし、汗は滝の如く流れている。
 そして千岳大帝は、そんな悠姫を見て、凶悪な笑みを浮かべていた。
「今の儂には、世界を変えるほどの力がある。ちょうどよい、お前たちで肩慣らしをするとしよう」
 口の中で何か短く呪文を唱えた千岳大帝は、突如雄叫びを上げた。


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