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作品名:仙珠伝奇 作者:ジン 竜珠

第67回 第四章・五
 朝の陽(ひ)が眩しい。
 こんなにダイレクトに朝日を感じたのは、久しぶりだ。
 ゆっくりと体を起こすと、そこは自宅のベッドの上だった。どういうわけか窓際に移動させてある。朝日を感じたのは、そのせいだったようだ。
 背伸びをして、周囲を見回す。
 間違いなく竜聖の家の、寝室だ。誰かが着せてくれたのか、サマーセーターにジャージーのズボンを着けていた。
 何か、美しく儚く、そして不思議な夢を見ていたような気がする。
 しかし意識がはっきりしてくると、我を失って暴れていたことの方が思い出されてくる。
 なんてことをしてしまったのだろう。竜聖の心の中から、深い悔悟の念が湧き上がり、気分が鬱(うつ)になってくる。
 その時、ドアが開いて誰かが入ってきた。
 兵摩だった。彼は起きあがっている竜聖を見て一瞬驚いたあと、顔をほころばせて言った。
「竜聖君、気がついたんですか」
 安堵の表情を浮かべる兵摩を見ていると、いたたまれない気持ちになってくる。兵摩は竜聖を見ても顔色をかえず、むしろいたわるような眼差しを向けてくる。竜聖としては、いっそ罵倒してくれた方が、まだ気も楽だった。
「あ、あの」
 口を開きかけて、思わず口ごもってしまう。胸の中に浮かぶ慚愧(ざんき)の念は、とても言葉に表せそうにない。そしてそれ以上に自分の犯した罪の重さに、今この瞬間にも、消えてしまいたいほどであった。
 竜聖がうつむいて口ごもっていると、兵摩の声が静かに耳に届いた。
「気にすることはありません。僕も、かつては……、いいえ、今でも『罪人(つみびと)』なんですから」
 思わぬ言葉に顔を上げると、兵摩は、どこか悲しげな笑みを浮かべている。それはまるで竜聖の気持ちを代弁するかのようであった。
「少し、いいですか?」
 兵摩の誘いに、竜聖は頷いた。否、そうせざるを得なかった。兵摩の表情は、今の竜聖が負っているものと同じ何かを感じさせたから。


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