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作品名:仙珠伝奇 作者:ジン 竜珠

第65回 第五章・三
 煌竜は再び柔らかな笑みを浮かべた。
「しかし、その道を達成出来ない者もいる。そこで、そういった者たちは考えた。神に成れないのなら、自分たちの住む世界を神界と同じにしてしまおうと。そのためには、ある『世界』と深く交流する必要がある」
 その世界が何であるか、竜聖は聞かずともわかったような気がして、ふと口に出した。
「人間界」
 嬉しそうに大きく頷いてから、煌竜は言った。
「『人間界』は神が直接、創り出した世界だからね。『自由意思』にあふれていた。竜聖クン、キミは、自由な生活を送っているだろう? どこかに『来い』、と言われても、キミは自分の意思で行かないことが出来るし、そこへ行く途中、寄り道することも出来る」
 得心のいく話だった。よく「自由な生活」に憧れを抱いたりするが、考えてみれば自分の行動は自分で決めていることが多いのではないだろうか。これも、ある意味では「自由な生活」ではないだろうか。
「その神仙たちは人間界と交流を深めて、より完全な神仙界を作りたいと考え、神に祈った。その求めに応じて、ボクと竜皇姫が竜夢神仙界を創った、というわけさ」
 この求めは特に宇宙の秩序を乱すとは思われなかったため、神界でも「是(ぜ)」と判断したようだ。
「じゃあ、もしかして、あなたは神界の、つまり神様?」
 話の流れからすると、そうなる。竜聖はまさに神と対話しているのだ。
 とんでもなく畏れ多いことをしているような気になってきた。自分としては全くの無神論者ではないが、それほど信心深いとも思っていない。それでも竜聖は自然に体が震えてくるのを抑えられなかった。
 だが、煌竜は太陽のように明るい笑顔で言った。
「気にすることはないさ、ボクとキミの仲じゃないか」
 一体どういう仲なのか、問う間もなく煌竜は話を再開する。
「かくして竜夢神仙界は創られた。人間界と影響し合って発展するために、時間の流れも同じにした。他の神仙界なんかだと、時間の流れが異なっていて、神仙界に来た人間が三年間を過ごしただけなのに、人間界では三百年も経っていた、なんてことがよくあるみたいだけど」
 何のことか具体的には触れなかったが、竜聖は、ある昔話を思い出していた。
 傍らの女性が注ぐ酒を口に運びながら、煌竜は竜聖を見た。
「今、キミたちが相手をしている男、千岳大帝とかいったかな、彼はなかなかいい男だね。ただ、ちょっと近視眼的なところがあるようだ」
 ふと竜聖は疑問を感じた。悠姫の記憶の中では、千岳大帝が応竜玄帝を「視野狭窄」と罵(ののし)っていた。だが、今は煌竜が千岳大帝の方を「近視眼的」と断じている。
 一体、千岳大帝と応竜玄帝、どちらが大局を見ていないのか。
 その疑問に答えるような絶妙なタイミングで煌竜が言った。
「人間界と竜夢神仙界は、今や二つで一つの循環を為している。どちらか片方の道を塞いでしまうことは、その循環を止めてしまうこと。そして、それはどちらの世界にとっても好ましいことではない」
 いつの間にか真剣な表情を浮かべていた煌竜は語る。
「人間界との交流で、竜夢神仙界には『自由意思』が生まれた。でも、それはいいことばかりじゃない。邪悪な企みをする『自由』、悪事をはたらく『自由』が生まれたことも意味する。それに気づいた一部の神仙たちは、内面の治安の強化を図る一方で、人間界に働きかけ、人々の『自由意思』の純粋化を実現しようとした。だけど、これは思うように効果が上がらない。いいことも悪いことも、みんな影響を与えるわけだからね。人間をいい方へ指導する反面、悪い方向へと引っ張る輩もいる」
 呪力の影響。千岳大帝が言ったこととニュアンスは違うようだが、そんな言葉が竜聖の頭に浮かぶ。
「そのうち、人間の方でも神仙界の存在に気づきだした。もちろん、全部の人間じゃないけどね。そして、人間の側からも『祈り』や『信仰』という形で働きかけが始まった」
 そして教導を受け、神仙に「成る」人間も現れた。
「こうしてますます二つの世界はその結びつきを強くし、影響を与えあった。キミの知識内でわかりやすく言うと、『縁』が深くなったわけさ」
 この縁の深まりが、思わぬ事態に発展したという。それは、「人間界と竜夢神仙界との間での輪廻転生が始まった」ということだ。
「輪廻(りんね)転生(てんせい)については、わかるよね? よろしい。それまでも竜夢神仙界に転生する人間の魂は存在した。でも、それは神界の法則や霊界の法則に則(のっと)ったものだったんだ。だけど、縁の深まりのために、死後、直接、竜夢神仙界に生まれ変わったり、その逆の場合も起きるようになってしまった。一度起きてしまった以上、そう簡単には覆せない。もはや、二つの世界は、二つで一つになってしまってるんだよ」


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