小説&まんが投稿
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:仙珠伝奇 作者:ジン 竜珠

第49回 第四章・三
 キッチンに竜聖、悠姫、兵摩の三人がそろっている。
 修行しやすいように竜聖は上下ともトレーニングウェアに着替えていた。「気」を感じやすくするため、裸足になった方がいいと言われ、そのようにしている。
 そして混沌陰陽盤はペンダント状にして竜聖が首から下げていた。何でも、悠姫が呪を使って、混沌陰陽盤の『所有権』を竜聖に移しているらしい。持ち主である竜聖が所有権を放棄した時点で、混沌陰陽盤は誰の物でもなくなるが、言い換えれば竜聖が誰にも渡したくなければ、たとえ奪い取っても使うことは出来ない。千岳大帝が力に訴えて竜聖から奪い取らなかったのは、そういう理由もあったからのようなのだ。
 呪を解除して再び悠姫が首に下げようかという話も出たのだが、現時点では竜聖が持っていた方が安全だということになった。
「私が持っていると、運悪く千岳大帝の様子を探りに行って殺されちゃった時に、奴の手に渡っちゃうしね」
 悠姫が死ぬと、この呪は解けてしまい、所有権は次に手にした者に移るという。
 それはともかくも、修行である。修行の場は、悠姫が異空間を創って、そこで行うということだった。
「現実の世界でやると、あちこちに影響が出るからね、それから」
 と、悠姫は竜聖から髪の毛を一本程抜いた。そして懐から一枚の紙を取り出した。人の形に切ってある。その紙に竜聖から抜いた髪の毛を巻き付け、悠姫は呪文を唱えた。
 すると人形(ひとがた)の紙から白い粉状の物がこぼれ始めた。それが悠姫の足下で小さな山を作った頃、悠姫はその山の上に人形を落とした。その途端、その山が膨れあがり、紙の人形を飲み込んで盛り上がっていった。
 まるでパンの発酵みたいだ、と竜聖が考えている間にもその山は竜聖の身長と同じ高さまで盛り上がり、そして竜聖そっくりになった。学校の制服まで着ている。
「普通とは違う身代わりの作り方をしているから、ボロは出ないと思うわよ」
「えっと、これ、何?」
 いきなり自分そっくりのものを作られ、竜聖は訳がわからなかった。動かない自分の偽物を見ながら、竜聖は悠姫に問う。
「これから君に修行してもらうのだけど、さっきも言ったように時間がないの。だから一日二十四時間、フルタイムで修行してもらうわ」
「え?!」
「でも、君には君の生活があるわけだし、いきなりいなくなったら、大騒ぎになっちゃうでしょ? だから、それをごまかすためのダミー、てわけ」
 竜聖は我が耳を疑った。
 一日二十四時間、フルタイムで修行する、だって? いくら何でもそれは無理ではないのか? 自分は人間なんだから。
 あわてて竜聖が抗議しようとした時、兵摩が笑みを浮かべて言った。
「案ずることはありませんよ。君には、ある『仙薬』を飲んでもらいます。そうすれば眠る必要なく修行に打ち込めます」
「あ、そうですか」
 竜聖は、自分でも間抜けだな、と思うような答え方をしてしまった。相手は神仙、いわば人間を超越した存在なのだ。竜聖には思いもつかない方法で問題をクリアしたり、対策を講じるなどはお手の物だろう。
「じゃあ、この人形の鼻の穴に、君の息を吹き込んで。そうすれば、この人形は、君の身代わりとして行動を始めるわ」
 言われるままに、竜聖は人形の鼻の穴に息を吹き込む。自分そっくりの人形の、それも鼻の穴に息を吹き込むなんて、変な気分だった。


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 小説&まんが投稿屋 トップページ
アクセス: 25