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作品名:仙珠伝奇 作者:ジン 竜珠

第48回 第四章・二
 全身の気迫を込めて竜聖は頼み込んでいる。その様子に少々鼻白みながらも、悠姫は言った。
「君の決意のほどはわかったわ。でもね」
 言いかけて、何かに気づいたのか。少し考える素振りを見せてから、悠姫は兵摩に向いた。
「兵摩、悪いんだけど千岳大帝の結界の辺りを少し調べてきてくれるかしら? 何か動きがあるか把握しておきたいし。危険だったらすぐ帰ってくるのよ」
 突然そんなことを言われて、兵摩は怪訝な顔をした。
「どうしたんですか、いきなり?」
 問いかけられ、一瞬言葉に詰まったものの、悠姫は答えた。
「ほら、あれから一晩経っちゃっているし、その間に何か動きがあったとしたら、こちらもそれなりに対策を立てないとならないし。竜聖はちゃんと説得しとくから」
 突然こんな事を言い出した悠姫に今ひとつ解(げ)せないものを感じている様子だったが、それでも言っている内容には納得したようで、兵摩は術を使って、例の場所へ向かったようだった。
 兵摩の姿が消えたのを確認してから、悠姫が言った。
「もしかして、君、私に同情しているんじゃないかしら?」
 当たらずとも遠からずであった。そんな気配を察したのか、悠姫が溜め息をつきながら言った。
「いい? 君は私の記憶に感化されているだけ。一時の感情の昂(たか)ぶりなの。悪い言い方だけど、ほだされているだけなのよ。それで君が責任や義務感を感じる必要は、一切無いわ」
 諭(さと)すように一言一言、竜聖に語る。
 だが、竜聖はゆっくりと首を横に振る。
「それは違うと思う。いや、もしかしたら、そうかも知れないけど。でも、俺がこんな決心をしたのは、そのせいだけじゃないんだ」
 そして悠姫の目を見る。
「俺は今まで、積極的な生き方はしてこなかった。多分知らず知らずのうちに、仙珠がえぐり出されて死ぬことを、意識していたのかも知れない。でも悠姫の記憶が流れ込んできて、今までどんなに甘えた生き方をしてきたかを思い知った。それに君の辛い思いも知った」
「だから、それは」
 口を挟んだ悠姫にみなまで言わせず、竜聖はたたみかけるように言った。
「君の力になりたいんだ! 君は今まで誰にも、そう、兵摩さんにもこの辛さを話したことはないんじゃないのか? もう限界なんじゃないのか?」
「夢」として認識することはなかったが、今回のことで悠姫がずいぶん辛い目に遭っていることが感じられた。
 悠姫は何も言わない。言わずに黙って竜聖を見ている。
「こんな辛さを抱えていくなんて、耐えられないんじゃないのか? さっきも言ったけど、俺にとっても別の問題じゃないんだ。実際に君の辛い思いは、俺の辛い思いになってるんだ!」
 そう言って竜聖は胸に手をやる。
「俺は今まで甘えた消極的な生き方しかしてこなかった。だけどそれじゃ駄目なんだ。この辛さを克服する強さを持たなきゃいけない。強さを持つには何か行動を起こさなくちゃいけない。俺は、君と辛さを共有し、それを乗り越えたい! 君を護りたいんだ! そうしなければ多分、俺の中のこの辛さは、一生消えることはない」
 竜聖は揺るぎのない決意で悠姫を見た。
 悠姫は一瞬何とも言いようのない感情をその瞳に浮かべたが、すぐに強い光にかえて言った。
「わかったわ。君を鍛えます。でも時間的に余裕はないから、少し変則的な方法をとるけど」
 竜聖の胸に嬉しさがこみ上げる。
「よろしくお願いします!」
 大げさな程、竜聖はお辞儀した。


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