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作品名:仙珠伝奇 作者:ジン 竜珠

第47回 第四章・一
 正午を少し過ぎた頃、回復した兵摩が現れた。
 悠姫は今までのことを兵摩に詫びた。
 兵摩は黙って頷いた。それで謝罪を終わらせようということだ。
 頃合いを見て、竜聖が口を開いた。
「あ、あの」
 二人がこちらを見る。
 心臓が高鳴り、手の平に汗がにじむ。今から一世一代ともいえる決意を話すのだ。口の中が乾いてくる。自然と呼吸が浅くなり、息苦しくなる。
 やめようか。
 そう思う反面、話さなければという思いも強くなる。
 そもそもどうして自分がそんな決意をしたのか。それに思いを馳せた時、竜聖は二人に向かって頭を下げていた。
「俺を神仙として鍛えてくれ!」
 何を言い出したのか理解できなかったのだろうか。二人からの返答があったのは、それからかなりの時間が経ってからだった。
「な、何を言い出すの、竜聖?」
「そうですよ、どうしちゃったんですか、竜聖君?」
 二人の反応は予想通りだった。竜聖は考えていた理由を話し出した。
「いろいろ考えたんだ。俺がどの程度戦力になるのかわからないけど、少しは足しになると思うし。それに、千岳大帝が人間界をどうのこうの、て、よくわからないけど、あの時感じたのは、恐怖だった。だから、きっと千岳大帝が人間界を救う、ていっても、それは奴の都合と、やり方でしかないと思うんだ。それは多分、俺たち人間にとっていいことじゃないような気がする」
 そこまで言ってから、竜聖は顔を上げ、悠姫と兵摩を見た。
「それに、俺自身の問題でもあるんだ。仙珠と千岳大帝、そして兵摩さんや悠姫。みんな別々の問題じゃない」
 竜聖の決意を聞き、しばらく考えていた悠姫だが、ふと溜め息をついて言った。
「まるで誰かさんを見てるみたいね」
 悠姫の隣で兵摩が咳払いをする。
 その様子に口元に笑みを浮かべながら、悠姫は続ける。
「君の気持ちは嬉しいわ。でも神仙の修行は時間のかかるものなの。それに相手は千岳大帝。付け焼き刃や小手先のごまかしが通用するような相手じゃない」
 そのあとを続けるように兵摩が言った。
「僕にも君のいわんとすることはわかります。危機に何も出来ずに、ただ右往左往するしかない自分。腹立たしささえ覚えます。出来れば君に協力したい。でもこれは状況が違います。我々は絶対に勝たねばならない。負けるわけにはいかない。そんな状況で神仙の修行を始めたばかりの者がいては、はっきり言って足手まといです。わかってください」
 二人の言うことも、もっともだった。確かに竜聖はただの人間である。何か不思議な術が使えるわけでも、神秘な呪文を知っているわけでもない。
 熱意なら負けないつもりだが、熱意だけで千岳大帝に勝てれば、苦労はないのだ。
 だが、竜聖は諦めなかった。
「何でもいいんです! 術をかけてもらうのでも、囮(おとり)にするのでも!」


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