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作品名:仙珠伝奇 作者:ジン 竜珠

第43回 第三章・九
 縮地の術で戻った先は、竜聖の家だった。
 戦いで疲弊(ひへい)した悠姫はそのあとすぐに深い眠りに入ってしまった。兵摩は、戦いで受けた傷を癒すために、専用の陣を敷いてそこで休養する、とのことだった。その場所はもう決めてあるようで、竜聖に悠姫のことを託して出かけていった。
 とりあえず悠姫をベッドに寝かせようと、竜聖は悠姫を抱え上げた。
 驚く程、軽かった。
 まるで羽毛を抱えているかのようだ。
 あまりの軽さに風で飛ばしてしまわないように、そんな注意をしながら竜聖は、階段を上がり、寝室に入って悠姫をベッドに寝かせた。そして寝息を立てる悠姫を見ながら考えた。
「よく無事に帰って来れたよなあ」
 思わず言葉が口をついて出る。
 あれほどの激しい戦いの中にありながら、竜聖は目立った傷もなく、無事に家に帰って来ることが出来た。それは考えれば、悠姫が張ってくれた「結界」のおかげではないだろうか。最初、自分のことを人間扱いしていなかった感じがあるが、やはり気遣ってくれたということなのだろう。
「それとも、もしかして」
 と、竜聖はポケットから金色の円盤を取り出した。
 混沌陰陽盤。
 悠姫に言わせれば、仙珠を取り返してもこれがなければ「道」を回復することが出来ず、千岳大帝の手に渡れば「道」の回復が困難になるという代物。
 これを、護るためだけに強力な結界を張ったのだろうか。
 彼女の真意がわからない。
 それでも少し前なら、後者だったと思うだろう。
 だが、今は違う。
 竜聖は悠姫の涙を見てしまった。彼女が涙を流すところを。
 そして彼女が弱々しい表情を浮かべるところを見てしまったのだ。
 冷徹な彼女と、か弱い彼女。
 どっちが本物の悠姫なのだろう。
 考えても答えは出そうにない。
 とりあえず竜聖は壁にもたれて座り込んだ。
 次に頭に浮かんだのは、千岳大帝の言った言葉。
「すべての神仙界と交流を断ち、この人間界を、人の手に取り戻さねばならぬ。それは神仙である儂の役目であり、償いなのだ」
 千岳大帝は人間界の混迷の原因は、神仙界にもあると言った。そしてそれを正すために神仙界との交流を不可能にし、人間界を人の手に取り戻すと言った。
 正直言って、竜聖の理解の範疇(はんちゅう)を超えた内容だ。彼のしようとしていることが、さっぱりわからない。
 神仙からもたらされた呪術のせいで力場が乱れた、という話は喩(たと)え話(ばなし)のおかげで大体わかった。
 それを修正するために、神仙界との交流を断つ、というのも、何となくだがニュアンスはつかめる。
 だが、それを実現するために「煌竜の力」というものを使う、というのがよくわからない。
 あの戦いの中で見た「煌竜の力」は、確かに強力だが、同時に恐怖しか感じさせなかった。そんな力を使って、千岳大帝はどうやって人間界を人の手に取り戻させるつもりなのだろう。
 それともあれは純粋な力の存在であって、何かコントロールすることで別のことが出来るのだろうか。
 いずれにせよ、その答えは考えても竜聖に出せるものではないようだ。
 そんなことを考えていたからだろうか、それとも戦いから無事に帰って来られた安堵からか、竜聖は強い眠気に襲われた。それはとうてい抗(あらが)えるものではなく、竜聖はいつの間にか眠りに落ちていった。


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