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作品名:仙珠伝奇 作者:ジン 竜珠

第31回 第二章・十一
 兵摩が自分の代わりに怒ってくれたところを見たせいか、少しだけ竜聖は落ち着くことができた。さっきほどの悔しさはもう無い。
「兵摩さん、構いませんよ」
 竜聖がそう言うと、兵摩は眉間にしわを寄せ、申し訳なさそうに竜聖に頭を下げた。
「お見苦しいところを見せてしまって、すみません。君こそ、もういいんですか?」
 頷いて竜聖は悠姫に向き直った。
 そして一呼吸おいてから、宣言する様に言った。
「悔しいけど、あんたの申し出を受けるよ。協力する。だから、あんたの目的を果たしたら、俺の体をもとに戻してくれ」
 ゆっくりと頷くと、悠姫はこちら側に歩み寄った。
「まずはその傷を治すのが先ね。それから、君にこれを預けておくわ」
 悠姫は自分が首から下げていた金色の円盤をはずして竜聖に手渡した。
「それは玄帝陛下から賜(たまわ)った物で、『混沌陰陽(こんとんいんよう)盤(ばん)』というものよ」
 それは手の平に収まるぐらいの大きさだった。真円形で、内側に中心から八本の槍の穂先みたいな物が、ちょうど円を八等分する形で放射状に伸びている。そしてそれぞれの穂先の内側には、朱色で「休」「生」「傷」「杜」「景」「死」「驚」「開」と刻んである。
 さらにその字から少し円の中心に入ったところには複数の丸と線でできた小さな図形があり、穂先の根本近くには易占で見る様な陰陽八卦がそれぞれ朱色で刻んであった。
 円盤の中心には太極のマークがあり、これは白い光と紫色の光で出来た勾玉が互いを補い合う様に接合している様に見えた。
「千岳大帝から仙珠を取り返しても、私では『道』を開くことは出来ない。残念だけどね」
 と、さして残念でなさそうに悠姫は言った。
「その時に、それが必要になる。『混沌陰陽盤』が、必要な『方位』や、仙珠そのもののことを教えてくれる」
 千岳大帝が何をしようとしているのか、それを見越した上で、応竜玄帝が悠姫に授けたのだという。
 そう言いながら、悠姫が竜聖に手をかざす。暖かい空気の流れが皮膚の上を流れる。それと同時に、竜聖の傷が癒えていく。
 打撲による内出血は跡形もなく消え、切り傷はまるでその形のシールをはがす様に姿を消した。
 さすがに血の流れた跡までは消えることはなかったが、この分では人工の血糊を塗りつけた、といっても通用しそうなほど、竜聖の体から負傷の痕跡はきれいに消え去っていた。
 驚きを隠すことも忘れ、竜聖はただただ悠姫の手許を見つめた。
 そんな竜聖の様子には関心がないのか、悠姫は事務的にさえ聞こえる口調で話を続けた。
「奴との戦いは激しいものになるだろう。混沌陰陽盤が傷つくおそれはないが、どさくさに紛れて、奴の手に渡ることも考えられる。そうなると厄介だ。奴が逆に『道』の回復を邪魔することが出来るからな。だから、君に預けておくわ」


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